人気作品ともなれば、アニメ・ライトノベルといったメディアミックス展開やコンシューマー化も行われたりと、多くの人気コンテンツを世に送り出している18禁ゲーム(以下、エロゲー)。

しかし、「エロゲー業界が不況である」とはもう何年も言われ続けている。ダウンロード販売やソーシャルゲーム化など、多様化が進みつつも回復する兆しの見えないエロゲー業界の現状を追った。

 まず、今年3月に発行されたコンピューターソフトウェア倫理機構(ソフ倫)の会員向け機関紙『ソフ倫ニュース』3月号には、平成26年度の販売予測本数予測表が掲載された。

これによれば、加盟45社の来年3月までの年度内販売タイトル数の予測は936タイトル。前年度の実績965タイトルを下回り、前年度比97%となる見込みだ。

販売本数の予測は290万1900本。こちらは前年度の実績285万5100本をわずかに上回り、前年度比100.2%となる。つまり、タイトル数は減るものの、売り上げではほぼ横ばいになると見込まれている。

けれども、今後懸念しなくてはいけない問題は、横ばいから上昇へと転じる要素は特にない。あるのは、縮小が始まりそうな状況だけなのだ。

 近年、エロゲーはパッケージ版とダウンロード版の同時発売、“実用性”に特化した廉価版なども多くなっている。

しかし、“安く・手軽”になったからといっても、その市場が旧来のフルプライス作品に取って代わるには至っていない。ある業界関係者は語る。

「(業界全体として)廉価版タイトルは売れなくなってきています。ですので、廉価版で薄利多売をするよりも、多くの開発会社は単価が高いフルプライス作品を少量売るほうに流れていっていますね」(18禁ゲーム業界関係者)

 エロゲーを扱う流通会社も同様の考えのようで、廉価版の取り扱い規模は縮小の一途を辿っているという。

「まともに廉価版を扱ってくれる流通会社は、TIS(旧ホビボックス)くらいです」(前同)

 また、18禁ゲームの開発会社が“新たな鉱脈”と考えたソーシャルエロゲーも、やはり状況は厳しい。

2013年に鳴り物入りでリリースされた『グリザイアの安息』は、今年7月をもってサービスを終了。終了理由は明らかにされていないが、「予想ほどユーザーが確保できなかった」というのが業界のもっぱらの噂だ。

 この「グリザイア」シリーズは、秋からテレビアニメ『グリザイアの果実』が放送予定となっている人気コンテンツ。それでもユーザーを確保できないほど、ソーシャルエロゲー業界は厳しいようだ。

 しかしながら、そんな困難な状況にありながらも、決してエロゲー自体がつまらなくなったわけではない。

必死にユーザーが「買ってよかった」と思うゲームを開発する人々には頭が下がる思いだ。18禁ならではの自由度を生かして、これからももっとユーザーの度肝を抜く作品が生まれてくれることを期待してやまない。