2014年は、経済産業省が漫画やアニメの海賊版を撲滅していくことを決定した(参考記事)。
今までインターネット上で海賊版のコンテンツを見てきた人たちは、大きな衝撃だったのではないだろうか。
海賊版は利用者にとってはありがたい存在なのかも知れない。なんといったって、ただでネットさえあれば買わずにコピーされたコンテンツを視聴できるのだから。
しかし、提供者にとっては失うものが多い。経済産業省の調査(平成25年度)では、漫画やアニメの海賊版被害は米国だけで約2兆円に上るとされている。このような被害額を知ると、提供者の立場に同情し、海賊版の撲滅は当然だと思うだろう。
一方、海の向こうでは「海賊版撲滅はむしろ漫画やアニメの売上を落とすことになる」といった議論が盛り上がっている。つまり、海外では「無料で見れてしまう海賊版は損」という考え方は大きな間違いで、「海賊版こそがむしろ売上アップに貢献している」という考え方が多いのだ。
どういうことなのか、今回はその一部をご紹介しよう。
まず、英語圏の公式ニュースサイト『ジャパンタイムズ』の「日本の経済産業省が海賊版撲滅を始めた」という記事のコメント欄で、「海賊版が著作権侵害であることはわかるが、世界中には正当な方法で見ることができない人々がたくさんいる。
それを日本の政府は考えてほしい。海外で無料で漫画やアニメが見れなくなるのは、将来的には大きな損失となるはずだ」という意見が盛り上がっている。
実際これに対して、「日本人は愚かだ」「考え方が理解できない」などといった賛同意見が世界中で集まっている。
ほかにも、英語圏のアニメコラムサイト『アニメアーセナル』で、デジタルアーティストのロベルト・ブレイク氏の「海賊版がファンを増やす」という意見が話題になっている。
ロベルト氏は、「日本のアニメ会社は、海賊版サイトと協力し合う方が市場にファンができて、売上が上がる。そもそも海賊版撲滅の本当の目的は、会社の利益を守ることだろう。それなら、海賊版を追いかけることにお金を使うより、ファンを幸せにしてお金を儲けることを優先した方がいい。
海賊版でアニメや漫画を見てくれる人が増えれば、その分だけ人気は上昇する。海賊版があるからといってDVDが売れないというわけではない。
むしろ海賊版サイトで作品を知り、ボーナストラックが見たい、カバーイラストを集めたい、コレクションしたい、などの理由でDVDを購入する者も少なくない。
海賊版サイトはアニメ会社よりアニメのファンをよく理解していると思うし、作品の新たなファンを増やすきっかけになるかもしれない。だから、海賊版サイトに素材を提供して、より商品を購入しやすくするのはどうだろうか」と主張している。
つまり、海賊版でアニメを知ってDVDやグッズを買っている人は多いので、その売上がなくなるとアニメ会社は困るはず、ということ。これは、それだけ日本のアニメが評価されているということでもあるので、少し考えさせられる意見ではないだろうか。
もちろん、だからと言って海賊版の存在を肯定してはいけない。
ただ、私たち日本人は「無料は提供者にとってメリットがない」と考えてしまうが、ロベルト氏の言うように、少し視点を変えて、無料でコンテンツを提供してお金を稼ぐ方法は模索してもいいのではないだろうか。
例えば、無料のコンテンツを出す代わりに提供者が広告収入を得られるようにする、無料で一部の素材を提供してその特典は有料にする、などはすぐにできるのではないだろうか。
実際、著作権フリーの素材を求める人は少なくない。ちょうど今、はてなブックマークで「著作権フリーのマンガ画像、アフィリエイト宣伝素材があればいいのにな」といった内容のエントリーに注目が集まっている。
個人ブログ『団劇スデメキルヤ伝外超』(参照)の「試し読みなどで、無料公開されているものが多いので、それらの中からは、画像転載して良い…とか」との意見に対し、はてなブックマークのコメント欄では「たしかに部分的にフリーで使えるとうれしい」「クリックじゃなくて購入報酬型のアフィリエイトと組み合わせられないかなあ」などといったものが見られる。
このまま海賊版が減れば、比例して世界のファンも減ってしまう可能性がある。しかし、ファンを増やす目的で素材を配布しようとする日本企業が出てくれば、状況は変わるのではないだろうか。