写実的に書いた絵が「児童ポルノ」に該当するのか? 2013年7月に、CGで描かれた少女のヌードをめぐり、岐阜県在住の男性が児童買春・ポルノ禁止法違反容疑で逮捕された事件の初公判が、12月19日、東京地裁で開かれた。

 この事件について、一部では「過去に販売されていた少女ヌードの写真集をスキャンし、加工して販売した」と報じられているが、これはまったくの誤報だ。逮捕されたデザイナーの男性は、写真集は参考に使った程度で、実際には想像で描いていたとしている。ここが事件の大きなポイントだ。たとえ写実的だとしても、想像で描いたものはあくまで本人の創作したアートの範囲であるはず。もしも、これが「児童ポルノ」とされるならば、古来からの芸術的な絵画、近年のマンガ・アニメまで「二次元」のさまざまなものが「児童ポルノ」とされる可能性を帯びてくるからだ。

 しかも検察官は、逮捕された男性がそれらのCG集を「メロンブックス」に販売委託し、そのデータがイラスト系SNS「pixiv」の管理するサーバーに保管されていたことを指摘。もし、男性の描いたCGが「児童ポルノ」と認められた場合、マンガ・アニメファンにとってメジャーな企業であるメロンブックスとpixivが「児童ポルノを世間に流布することに関与した企業」とされてしまう。

 公判の中で、弁護団からはそもそもCGが「児童ポルノ」に当たるとする検察側に対し、疑問を提示。男性も「私は無実です」と力強く答えた。

 今後の裁判では、弁護側、検察側の双方が証人を招くほか、実際に写真のトレースではなく想像で描いていることを実証するなどして、進められる予定だ。

 被告側の弁護団は、山口貴士氏、奥村徹氏、壇俊光氏の三名で構成されている。閉廷後、記者団の取材に答えた壇氏は

「こうしたCGが児童ポルノに該当するとなったら、創作表現に大きな萎縮効果をもたらす。参考にした写真には、被写体である少女が存在するという意見もある。それは名誉毀損にあたる可能性もあるが、まったくの別問題です」

 と語った。

 次回公判は、検察側の証人として、CGで描かれているのが“18歳未満の少女”であると判断した医師を招く予定。期日は現在のところ未定だ。

 なお、この裁判において弁護団はすべて手弁当でありカンパも求められている。

(取材・文/昼間 たかし)