
迫力がポイントとなるワニマガジンのエロマンガの中にあって、オクモト悠太氏は格段に画力で魅せるのが上手い。『恋染まーきんぐ』も、カラーの塗りやモノクロページにおけるトーンの処理を器用に使った魅せる絵で、いったいどのコマで興奮すればよいのかと目が泳いでしまう。
早い話、単行本の表紙イラストを見て欲しい。こういうイラストを描くとき、通常のエロマンガであれば、もっと女体に付着している精液をわかりやすく描くだろう。グッチョグチョに女体が汚されている雰囲気を出して、興奮を煽るわけである。ところが、ここでは脱ぎたてパンツで興奮を煽ろうとしている。パンツのレースの描き込みが、なにかに取り憑かれたかのように細かいし、濡れているシミの部分も、えらく凝った塗りがなされている。
そして、あまり主張していないかに見える精液も、よく見ると左右の手の中指にも付着している。ここに精液がついているかどうかで、イラストの印象はかなり変わるはずである。こうした汁の描き方とか、濡らし方がとにかく上手いのである。しかも、カラーの一枚絵が上手いのではなくて、すべてのコマで上手い。すなわち、手を抜いていないのだから圧倒される。
モノクロページも見てみよう。冒頭の収録作『生意気すぎんぞメイド様!』は、学園祭でのメイド喫茶を機に、主人公と生意気なクラスメイトの女のコがハメてしまう物語。生意気な子が「強引にされるの好きぃ」となるセリフもさることながら、とにかく手を抜くところのない絵が上手い。
メイド服の細かいフリルを小さなコマであってもちゃんと描いている。そして、パンツのシワと濡れているシミがトーンの濃淡で丁寧に表現されている。とりわけ、パンツのシワに陰影をつけることで、モノクロページなのに光沢のある触り心地のよい素材であることがわかる表現がされている。正直、ここまでこだわらなくても抜群にセンスがいいはずなのに、病的にまで精巧だ。それは、描きながら湧き出る興奮を叩きつけているのが明確にわかる。
別の作品でも見てみよう。『パーフェクト・ナース・コール』は、なぜか病院の看護師が常にガータベルト+ストッキングで勤務しているという美味しい設定。なぜか超ミニスカの白衣とストッキングとのバランスが絶妙なのである。もちろん、下着の描き込みは執拗だ。そして、注目したいのは事後のラストのコマ。
散々中出しをされて楽しんだ看護師は、当たり前のようにパンツを履き直すのだが、そこからエラい勢いで精液が逆流しているのだ。このあふれ出して、太ももにまとわりつくようになっている精液によって、本番シーン以上の興奮が生まれてくるのだ。
ヒロインが日焼けしたギャルの『レッスン・フォー・ミー!』の場合、まず日焼けした肌の光沢感をトーンの削りで的確に描いている。でも、ホントに注目すべきはそこではない。よく見ると、ほかの作品と履いているパンツが明らかに違う。別の収録作『ほろ酔いCherry-Pick』では人妻が登場するので、それと見比べてもらえばわかるが、ヒロインごとに履いている下着を完全に描き分けているのだ。
このこだわり、もはやスゴイというか、言葉が思いつかない。きっと、単に迫力に圧倒されているだけではない興奮がわき上がるのも、こうした細かい仕事がなされているからこそだろう。この単行本、永久保存モノだ。
(文=ピーラー・ホラ)
『恋染まーきんぐ』
ページ数:231ページ
筆者:オクモト悠太
出版社:ワニマガジン社