
こ、これは究極のオナニーなんじゃあなかろうか。
ちみチャンガ『パラレルワールド彼女』(キルタイムコミュニケーション)を読んで、そう思った。キルタイムコミュニケーションの各種アンソロで活躍しているちみチャンガ氏の作品を集めた一冊なのだが、とにかく表題作の『逆転パラレルワールド彼女』の2本+おまけ1本を読むだけのために買う価値がある。
この物語、基本設定は主人公のところに、パラレルワールドから自分がやってきたというもの。そのパラレルワールドというのは、主人公のいる世界とは、すべてが正反対の世界。性格も性別も、だ。
1作目では主人公が定職にもつかないドSなダメ男。2作目では、気弱なモテない男子という設定になっている。1作目で設定がちゃんと説明されているのだが、主人公がダメ男であればあるほどに、パラレルワールド側は上手くいく。でも、ドSになればなるほど、自分がマゾ女になってしまうというわけである。
そんな状況を止めようと、主人公の世界にやってきた、向こうの世界の主人公。でも、こちらの世界の主人公に「パンツ脱げ」といわれたら「そんなことするわけ……」といいながら、身体は勝手に命令に従ってしまうのである。
そうして描かれるセックスだけど、性別は違えど自分とイコール。だから、存外に具合がいいのである。いわば、パラレルワールドの自分とはいえ、自分とのセックス。オナニーのようで、オナニーではないような、なにかアブノーマルな雰囲気がプンプンと伝わる。
絵柄が絶妙に可愛いタッチなので気づきにくいが、これは近親相姦の上をいくアブノーマルな雰囲気が……。せっかくの設定なのに2作品だけは勿体ない。ぜひ、この世界感で多くの作品を描いてほしいと思った。
なお、ほかにもさまざまな作品が収録されているが、とりわけオススメしたいのが『城塞都市フロス陥落』だ。これは、侵略を受けた都市を舞台に女神官が敵兵に輪姦されるというもの。舞台になる聖なる神殿は、守護霊とかが飛んでいて神官には見える。見えるのだけれど、犯されている間もなにもしない。それどころか、祭壇の火が消えたら消えてしまう。 なんとも役立たずな守護霊……。このいくらなんでもな役に立たない加減が、作品の味になっているのである。
とにもかくにも、自分同士のセックスというエロマンガの可能性を見られる一冊。ぜひ、新たな目覚めを感じて欲しい。
(文=ピーラー・ホラ)
『パラレルワールド彼女』
ページ数:172ページ
筆者:ちみチャンガ
出版社:キルタイムコミュニケーション