1年に1度、全裸で堂々と自転車に乗って公道を走ることが事実上許されている日がある。それは各都市で開催されている「World Naked Bike Ride」のイベント日だ。

■オーストラリア・メルボルンで全裸自転車マスライドが行なわれる
先の3月19日、快晴のオーストラリア・メルボルンでサイクリストのイベント「World Naked Bike Ride in Melbourne」が開催された。現在17カ国、74都市あまりで開催されているWorld Naked Bike Rideだが、ここメルボルンでは2005年から毎年開催されている。
現在、南半球のオーストラリアでは秋にあたり、裸で自転車に乗るには暑過ぎない快適な気候で、多くの裸サイクリストたちがマスライドを楽しんだということだ。
道路を埋め尽くす裸のサイクリストたちを偶然に目撃した街の通行人たちは、驚きの表情を見せつつもすかさずスマホを取り出して裸のサイクリストたちを撮影。街角ヌード撮影大会の様相も?
南半球では最大の裸マスライドというこのイベントだが、当日は警察の協力は仰ぐものの、交通整理要員などはすべてボランティアによって運営されている。
少なからずエロ目線で見てしまうのもの無理はないとは思うが、このイベントは公共の場での合法な肌露出が第一の目的ではない。主にクルマのドライバーに対するサイクリストの側からのメッセージでもあるのだ。
道路上では弱者でもあるサイクリストは、ややもすればクルマのドライバーから軽視されがちであるとも言えるだろう。このイベントでは、何かと無視されがちなサイクリストたちが周囲の視線を一身に浴びることになる。自転車の存在を広くアピールすることが第一の開催理念となっているのだ。この日は1年で1回、サイクリストが堂々と目立ちまくる1日なのである。
■コンセプトは「肉体を賛美した世界」
参加に際してあくまでも服装は自由だが、コンセプトは「肉体を賛美した世界」である。クリエイティビティも大いに歓迎されていて、ボディペインティングを施して参加するサイクリストも見られる。また、車体そのものをアートな演出で見せている参加者もいるようだ。
もちろん、わいせつ目的で公衆の目前で裸になることは多くの国で禁じられているが、少なくともWorld Naked Bike Rideが開催されている地域では、事前に当局に通知した上で行なうマスライドについては、わいせつ表現ではないとして許可していることになる。それでも、これまでの開催の歴史の中で数名の逮捕者や罰金刑を課された者が出ているが、いずれもイベントを利用した悪意ある行為によるもので、普通の参加者が罪を問われたことはない。ちなみにメルボルンの開催ではこれまで1人の逮捕者も出ていない。
参加にあたっては特に登録や個人情報の提出などはなく、当日の集合地に自転車に乗って行くだけである。また自転車以外にもスケートボードやローラースケートなどの人力で走るアイテムでも参加が可能である。
同じ“バイク”でもオートバイでの参加が認められていないのは、開催理念には“エコ”も含まれているからである。社会の化石燃料への依存に異議を唱えるイベントでもあるのだ。興味のある向きは、海外旅行がてらに参加してみれば忘れられない体験になるだろう。
(文/宍戸ペダル)
【参考】
・Herald Sun
http://www.heraldsun.com.au/news/victoria/world-naked-bike-ride-takes-over-melbourne-streets/news-story/771ed2adac357b4cac7300f06531fa19
・WNBR Melbourne
http://wnbrmelbourne.com.au/#events