今回、出版社からNGなしで描いてよいということで仕上げた作品をまとめたという。心島咲『マスカレイデッド』(メディアックス)。
いつもは適度にギャグを挟み込む心島氏ですが、今回はシャレにならない作品しか収録されていない。上級者を除いては、読むのは危険な取扱注意の一冊である。
なんで、そこまで注意するか?
当たり前である。表題作にはロリ強姦魔による強姦殺人事件が登場し、死体まで描かれているからである。
もちろん、18禁ジャンルにおいて死体が取り扱われるのは、ままあること。とりわけ、サブカル的に評価の高い早見純氏の作品なんて、血塗れグロばかりでまったく勃起する作品ではない。
今回、心島氏は従来存在していたユーモアを吹き飛ばして、完全にそちらに寄っているのである。
表題作は、単に少女がロリコンにレイプされて殺されるみたいな、生やさしいものではない。殺された少女の同級生の視点で描かれる物語は、狂気の世界である。殺された同級生が、どのようなことをされてしまったのかと妄想し、興奮しまくる少年。その果てに、ついに自分も少女を強姦し殺してしまうのである。
元来、独特の劇画タッチの作品を描いてきた心島氏。今回は、そのタッチゆえにか犯罪性がヤバい水準に達している。それでも落ち着いて読めるのは、過去のユーモラスな作品も読んだことがあるからである。これが初見だったら「マンガを読んだら、つい……」とリアルに事件を起こすトリガーになりかねないほどのヤバさを持っているのだ。まさに、エロマンガという名の狂気ならぬ凶器といえる危険な作品なのだ。
でも、収録作には、もっとヤバいのがあった。それが、全5作にわたって描かれる連作「柊」である。
この作品、どう見ても日本軍みたいなのが、村を襲って「中国娘」を強姦するシーンが、登場するのである。
さ、三光作戦……?
いやいや、日本軍とは明示していないけど、完全にそれである。そもそも「三光作戦」とは、中国側の呼称だし、歴史認識としてもいろいろあるところ。そんな微妙な問題をエロマンガにブチ込んでくるとは……。
その理由は明らかだ。変態の行き着く先の一つの方向性として、歴史的な虐殺事件とか殺人事件にも性的興奮を抱いてしまう人は確かにいる。もはや、何を描いても問題ないと判断した心島氏が、自分の性癖を叩きつけているのである。歴史認識とか事実かプロパガンダなどどうでもよい。自分はそういうので興奮してしまうという事実を世間に公表しているのである。
要は、前半の表題作で描かれた猟奇殺人とイコールなのである。
そこまで変態だったのなら、もう脱帽するしかない。でも、ちょっとやり過ぎ感が心配である。
ハッ、衝撃だらけで、まったく勃起できないよ。この単行本。
(文=ピーラー・ホラ)