いつも、今月はどんな趣向で責めてくるのか。いや、毎月一冊はTSFを出しやがれと思っているキルタイムコミュニケーションのマジキチなアンソロ。2月は『ガニ股開脚で屈辱アクメ!』なる、これまたえらいタイトル。
いつも、書店で吟味をしているわけだけど、これは買うべきか、一瞬躊躇した。確かに、世の中にはガニ股開脚という嗜好を好む人もいる。でも、それはさまざまな凌辱プレイの中の、ごくごく一場面にすぎない。いわば、熱々のステーキの皿に添えられている一欠片のジャガイモかニンジンといったところ。それが全面的に主張することに価値はあるのか疑問であった。
何しろ、どうせみんなファンタジーとかで、ヒロイン堕ちなんだろうと、あまりに先が読めすぎたからである。
でも、そんなことはなかった。
さすが、こんなマジキチアンソロに集められたマンガ家陣。難しいお題に知恵を絞りつつ、ついでに自分の嗜好を満たして、原稿料ももらおうと頑張っている。
とりわけ、お題に沿っていれば、マンガ家が趣味を全開にしてもよいユルさの部分が、今回は特に濃厚である。中でも、好きなモノを描いている感が一等強いのが、えもんず「荒野でガンガン」である。これ、戦うヒロインには違いないけど、女保安官である。正直、西部劇というのは現代においては、オワコン。
映画『マグニフィセント・セブン』が話題にはなっていたけど、大ヒットかといえば、そうでもない。エロがらみだと、虚淵玄氏が趣味を丸出しにしたエロゲー『続・殺戮のジャンゴ -地獄の賞金首-』(ニトロプラス)が知られるところだけど、良作=マニアが受けるネタの仕込みが大量、だけど、あんまり売れなかったのは、よく知られるところ。そんなネタでも描けるわけだから、アンソロはいいものだ。
物語のほうは女保安官が盗賊団に輪姦という、けっこうスタンダードな展開。もったいないのは、いろいろと描きたいことがありそうなのに、展開し切れていないこと。なので、今後の別シチュエーションでの爆発に期待したい。
松波留美「痴漢捜査官荻野葵」は、タイトル通り痴漢捜査官がヒロイン。しかも、捜査官だけど、様々な制服を着用して自分がターゲットになって、痴漢を逮捕しているという設定である。そんな捜査官が、今まで逮捕された痴漢たちに復讐されるというのが、物語。電車内で着衣ガニ股アクメを晒すというのが見どころである。
しかも、舞台となる車両は乗客がすべて、復讐のために集まった痴漢という点が、無茶苦茶でたまらない。なんで、エロメディアに登場する痴漢は、池波正太郎や小池一夫作品に登場する犯罪者のように、妙に組織化されているんだろうか。謎だ。
でも、この作品。エロシーンあるページは、全ページヒロインがガニ股になっている。ちゃんと本来の目的を果たそうという必死さがたまらない。
ちょっと、筆者はガニ股の嗜好というものに疎いのだけれど、この手の趣味の人は感涙なのか?
もつあき「巨人族の女騎士VSゴブリン軍団」は、ネタがまとまらないままに、夜が明けてしまった末に無理矢理まとめたような投げやり感が味を出しまくってる作品。1ページ目だけ見ると定番のヒロイン堕ちかと思えば、3ページ目では、もう罠にハマって「聖騎士であるこの私が……」と定番のセリフ。その、罠には手書きで「ワナ」と書いているから無茶苦茶だ。それに、タイトルにある巨人族設定が、どこにも説明がない。そんなどうしようもなさが、高度なギャグになっているのだ。
すぐには理解し難い、あまりにもニッチな嗜好を集めた本作。作家陣の努力だけは、光っているような気がするぞ。
(文=ピーラー・ホラ)