街角アート作品なのか!? それとも性質の悪いイタズラなのか? 地下鉄車両の座席にモッコリした突起物が! 座席をよく見ると、背もたれは裸の男性の胴体部分を模してあり、座る部分には男性器のオブジェが! 知らずに座れば思わず声を上げるコト必至という感じなのだが……。

■地下鉄車両に“ペニス座席”
ラッシュアワーの混んだ電車内では、場合によっては乗客同士のカラダが触れ合うこともあるだろう。場合によっては、隣に立った男性の下半身の突起物が接触することがあるかもしれない。
もちろんそれが、混雑のために止むを得ないハプニングであれば仕方のないことではあるが、中には満員電車にかこつけて意図的にイチモツを押しつける不埒な輩も……つまり痴漢だ。
こうした痴漢や、セクシャルハラスメントを撲滅すべく現在キャンペーンを行なっているのが、国連の1セクションであり女性の地位向上を目的とする組織、UNウィメン(UN Women)だ。そして今回、メキシコのUNウィメンが地下鉄に“ペニス座席”を導入して電車内セクハラについての“啓蒙活動”に取り組んだ。
反応はさまざまだが、初めて目撃した際には思わずギョっとしてしまうだろう。シートの上部の窓にはスペイン語で“男性専用”と書かれたステッカーが貼ってあり、座って下に視線を向けるとシートの真下の床にもステッカーが貼ってあり、そこには「ここは不快な座席ですが、決して女性が日常生活で苛まれている性的虐待と比べたりはしないでください」と記されている。もちろん皮肉であり、満員電車などで日常的に体験している性的な不快感や虐待をこの機会に男性にも味わってもらおうという企画だ。
人々の反応を収めた動画撮影を含めて、この一件は「The Seat Experiment(シート実験)」と名づけられた社会実験であるということだ。座った男性に“意識改革”がもたらされたのか、それともイタズラ番組の撮影や物騒なアート作品のようなものと受け止められたのかはさておき、強烈なインパクトを与えるものであったことは間違いないだろう。
■成人男性が公共スペースでの女性の立場を理解するキッカケに
メキシコでは女性の9割が公共交通機関の中で一度は痴漢に遭ったことがあるといわれていて、特に地下鉄車内での痴漢被害が常に問題になっている。そこでこうしたキャンペーンを通じて、電車の中で女性がどういった状況に晒されているのかを男性に“身を持って”理解させる狙いだ。
ご存知の通りラッシュアワー時などには一部の車両が「女性専用車」になるという対策が講じられているが、時にはこうしたインパクトに訴える形での“啓蒙活動”も必要とされているのかもしれない。つまり不快に感じてくれた乗客が多いほどこのキャンペーンが成功するということだ。
キャンペーンではこの他にも、プラットホームに立つ男性客の臀部を狙ってカメラに収めて、駅構内のディズプレイにライブ中継する“社会実験”も行なわれた。幸運にも(!?)選ばれた男性は、ホームのディスプレイにどういうわけか自分の尻が大写しになっているのに気づいて思わずビックリさせられたようである。
選ばれた男性の多くは「なぜ自分の尻が?」と不可解このうえない思いを抱くのだろうが、しばらく考えてみてあり得る可能性として、他者からの“エロ目線”が意識にのぼってくれば企画は成功ということだろう。駅や電車内で周囲の人々からお尻を“エロ目線”でジロジロと見られている女性の気持ちをこうした企画で一瞬ではあれ味わえるかもしれない。
賛否両論の意見が寄せられた今回の“社会実験”だったが、一応は“社会的強者”である成人男性が公共スペースで女性の立場になってみることで、決して少なくない“気づき”がもたらされそうだ。
(文/宍戸ペダル)
【参考】
・Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/news/2017/03/31/authorities-install-penis-seat-mexican-public-transport/