千明様はまるで、宝物を自慢する子供のような喜色ばんだ笑みを浮かべて、僕の腕を引っ張り、ベッドルームのドアを開けた。そこには、部屋中に、錨シンジ、泡波レイ、葱流・アスカ・ランクレー、渚カホルといった、エヴァの主要な登場キャラクターたちのフィギュアが、サイズ別に置かれていた。その中でも特に、千明様が好きだと言っていた泡波と渚に関しては、今にも動き出しそうな程にリアルな、等身大の蝋人形がアクリル製の巨大なケースに一体ずつ入れられて陳列されていた。
「凄い、本物の人間みたいだ」
思わず手で触れようとしたら、
「やめて!」
突然、怒鳴られ、伸ばした手を叩かれてしまった。
「痛っ」
赤くなった手をさすりながら、驚いて千明様の方を見ると、
「大事なコレクションなんだから、絶対に触らないで」
GOGO夕張メロンを演じていた時を彷彿とさせるような、殺意に満ちた目で睨み返されてしまった。僕は、驚きと、M心を刺激された快感とが綯い交ぜになった、複雑な感情を抱きつつ、
「ごめんなさい」
素直に謝ると、
「分かってくれればいいの」
一転して、千明様は満面の笑みを浮かべ、
「ちょっと待っててね」と、チェストの棚を引いて、何やらゴソゴソと探し始めた。その姿を、横目で視界の中に入れつつ、見事なコレクションを眺め、呆然としていると、
「シンジ君、これ着てみてくれる?」
ごく自然に、僕のことをシンジ君と呼んだ千明様は、何やら白い服を差し出してきた。
「何ですか?」
受け取って広げて見ると、それは、錨シンジが、人型決戦兵器・エヴァソゲリオソに乗る際に着るプラグスーツと呼ばれるスーツを模した、白と青の配色の全身タイツだった。
「絶対に似合うと思う」
千明様は期待に目を輝かせるようにしてそう言うと、
「私には、どっちを着て欲しい?」
泡波バージョンのプラグスーツを模した、真っ白な全身タイツと、アスカバージョンのプラグスーツを模した真っ赤な全身タイツを両手で掲げて見せてきた。
泡波ファンの僕としては、真っ白な方を選びたいところだったけれど、千明様には真っ赤な方が似合う、いや、それを着てる姿が見たいと思った。
「こっちね? 私はリビングで着替えてくるから」
真っ赤な全身タイツを手に、千明様は部屋の外へ出た。なんだかおかしな展開になってきたな、と思いつつ、僕は急いで、全身タイツを着てみた。それはまるで、僕の体に合わせて作られたかのように、体にフィットした。姿見鏡の前に立つと、シンジになったような気がしてきて、満更でもなかった。ただ、あまりにフィットし過ぎているため、股間部分がモッコリと強調されて見えるのは少し恥ずかしかった。
ドアがノックされ、
「どう? 着替え終わった?」
はしゃいだような、千明様の声が聞こえてきた。
「着替えました」
そう返事をすると、真っ赤な全身タイツに身を包んだ千明様が入ってきた。僕と同じく体にフィットしたタイツのせいで、胸の形や大きさ、くびれの曲線美が強調されてしまっている。その艶めかしい姿を見て、僕の股間部分はさらに窮屈さを増した。
「やっぱり、似合う!」