単なる実用のためだけの作品のハズなのに、ちゃんとSFになっているではないか。
そうきゅー。『催淫VRコントロール』(ジーオーティー)は、主人公が美味しい思いをするために頑張っている感が半端ない作品である。
この作品、最近はエロゲーでよく見るようになった、女の子をコントロールできるアプリを利用し、ヒッキーの主人公が美味しい想いをしまくる物語である。
エロゲーユーザーならばご存じだろうが、催眠や薬などでヒロインを自由に操って、ヤリまくる展開は実用作品の定番。中でも、アプリによる身体や精神の操作は、気がつけば当たり前になってきた。以前は、誰かに教わった催眠術とかが多かったが、より簡便になっているという具合だ。
この作品も、そんな感じの実用作かと思ったら、違った。ヒッキーの主人公が手に入れた「Another Line」は、謎だらけのアプリだ。
スマホからGoogleストリートビュー的な画面を操作するのだが、画面に映し出されるのは、すべて現実の光景。しかも、ゲーム内でコンビニに買い物に行けば、玄関に買い物したものが置かれていたりと、メチャクチャ現実に作用しているのだ。そのゲーム内で出会うのは、美しい大家さんやバイト先の後輩。これをゲームの攻略キャラと解釈した主人公は、必死で攻略を行うわけである。
しかし、それはゲームの攻略キャラではなかった。攻略してフラグが立ったヒロインたちが、リアルに主人公のアパートへとやってきて、セックスへと至るのだ!
そう、すべては現実。現実とゲームとの大きな違いは、主人公の見た目がゲーム内では適度にカッコイイことくらい。あとは、ゲーム内通貨はゲーム内で稼いだりと、けっこう地道である。何しろ、ゲームゆえに、催淫アイテムや好感度アップアイテムなども自在に使えるのだが、それらは高価。半ばで登場するJKを攻略すべく、それらのアイテムを入手するために主人公が編み出した手段は、ゲーム世界でのバイト。
「こなくそっ!! ひきこもりのやりこみを舐めんなよっ!!」
「働いて勝利を得てやる!!」
……あくまでゲームなので、やることは不眠不休で画面をタップすることである。
こうして、本作では美味しい展開を次々と描きつつ、その理由もきちんと設定している。
それは、部屋の外がさまざまな可能性の世界とつながっているというアレ。まさか単なるアプリものではなく、SFのスタンダードな設定を持ち込んで来ているとは予想外だ。
そうだったのか~と思いながら、読んでいて、ふと気づいた。
ゲームとはいえ、別の可能性の現実世界で、ここまで成功しているんなら、今の現実でも成功するんじゃなかろうかと。
うん、SFは奥深い。
(文=ピーラー・ホラ)