ぐすたふ『レイカは華麗な僕のメイド』(コアマガジン)は、物語で魅せてくれるメイドさんものである。
きっと、読んだ人は「久しぶりに、いいメイドものを読んだなあ~」と幸せな気分になることができるだろう。
物語は、突然莫大な遺産とメイドを手に入れた主人公・怜治の視点で描かれていく。遺産と屋敷と一緒に手に入れたレイカは、絵に描いたような優秀なメイド。本名も国籍も不明だが、とにかく優秀なメイドである。もう、メイドになるべく生まれたとしか思えない存在……と、思ったらガチで「メイドとしての記憶しかない」という設定である。
物語では、その実態は人ならぬものであることも示唆されるが、そこは重視せず、主人公との愛の日々が描かれていく。
当然、18禁作品であるから、レイカは淫乱メイドでもある。しかも、不明ながら年上というのは確かなようで、朝から「殿方はみんなこれがお好き」と、足コキで責めてくる。「ほんと……駄目なおちんぽですわ」など、言葉責めも完璧である。いやはや、メイドとしての記憶というのは、かなーり妙な形で蓄積しているようである。
さて、メイドものでの定番イベントといえば、デートである。いつものメイド服を脱いで、私服でまったく違う魅力を放つのかと思えば、違う。デートも、これまた別のメイド服でやってくるのだ。ちなみに、メイド服しか持っていないけど、色々と取りそろえているようで、バリエーションがあるのも嬉しい。
そこまでメイド服に執着するがゆえに、大変なことも起こる。主人公は、なんとか私服姿を拝もうと「メイド服を脱ぐまでは僕のメイドは、命令は聞いてもらう」と、無理矢理な理屈で、着替えさせる。結果、選んだ服が、タイトだったためか、あるいはメイド服にコルセットでも入っていたのか、途端に巨乳を強調する破壊力の高い姿になってしまうのだ。
おまけに、メイド服を脱ぐと自分という個体を注目されるために不安になってしまうという設定も。さらに、後半にはメイド服しか持っていないので、私服になってもブラジャーをつけるという概念がないという追加設定まで。
ううむ、作者のぐすたふ氏は、どこまでキャラ設定を掘り下げるのか! こうした設定の濃さが、物語の深みを創りだしているのである。
こうして、完璧かと思いきや、妙な設定でポンコツ感を出すレイカとの物語を描きつつも飽きさせない工夫はさらにある。ちゃんと、主人公たちの周囲の人間像も描いているのが、それ。中でも、主人公が所属する映画研究部の女の子・朝霧は、部長に告白するためにレイカに弟子入りして女子力を磨くというサブヒロイン的な立ち位置に。彼女をメインに据えた挿話では、いよいよレイカの指導で、夜中に部長の家をメイド服で訪問。当然、レイカの押しつけたメイド服に疑問を持っていたのだが、当の部長もメイドフェチで告白より前に本番という……。なにはなくとも、限りなく幸せな世界であることは間違いない。
作者のぐすたふ氏は、雑誌の読者コーナーへのイラスト投稿から、10年あまりでここに至ったという逸材。ひたすら、何かを描きたいという想いが、すべて結実している喜びが、作品に顕現しているといえるだろう。
単行本としての都合上、一巻で完結しているけれど、もっと読みたい作品である。
(文=ピーラー・ホラ)