戦うヒロインや気高い女の堕ちばっかりを描いてきた、ゆたかめ氏の初単行本『つわもの共が悪夢のあと』(キルタイムコミュニケーション)。
もう、タイトルからして、とにかくヒロインを堕としたい、ヒロインのピンチが好きで好きでたまらない感が伝わってくるではないか。やはり、エロマンガというのは表紙を見て購入を判断するもの、内容が一発でわかるタイトルは重要である。
さて、ゆたかめ氏であるが、ヒロインが堕ちるのであればSFからファンタジーまで、なんでも大好物な様子である。
まず収録作でオススメなのは、中編「生死の境界線」だろう。この作品は、異星人と戦っているヒロインたちが敵に捕らわれて、凌辱され尽くすという展開だ。
ここで、ゆたかめ氏の光るポイントが、まず一つ。エロシーンが始まる以前から、バトルスーツがエロい。こうしたSFといえば、なぜかやたらとピッチリと身体に張り付いて、体型がわかるバトルスーツが定番中の定番。そのあたりを、よ~く理解してキャラ造形をしているのだろう。そもそも、この服は、どうやって着ているだろうってくらいに身体に張り付いているのである。
そして、肝心の異星人による凌辱であるが、基本はエイリアン風味の生物に苗床にされるという展開。全4話も費やして、これでもかというくらいに苗床化されるヒロインたちを描くのである。この『エイリアン2』(86年)的な、どっかでみたようなシーン。一種、ベタベタな展開ではあるのだけれど、そのB級映画的センスが狙ってやっているとしか思えず、かえってワクワク感をそそるのである。
ちなみに、エロシーン以外の展開もB級映画的。ラストなんて、まさに「むかしは、日曜洋画劇場で、こんな映画をよくやっていたよなあ……」という印象が。
ちなみに、ゆたかめ氏は相当映画を観ているのか、収録作の短編「ビリー・ザ・キッド 穢れた英雄」は、まんま西部劇の定番を使って描く、女体化ものという……。
さて、そんな作風の作者の、もう一つの魅力がヒロインが堕ちないという点だろうか。いや、快楽には耐えきることができずに完全に堕ちているのに、精神面では勝利していたりするのである。
それがもっとも丁寧に描かれているのが、短編「亡国皇妃の異端審問」である。もう「亡国」とか「皇妃」とか「異端審問」とか、ファンタジー系での堕ち系が好きな読者を、興奮させるキーワードがてんこ盛りの嬉しい作品。
改宗させるための異端審問ということで、ヒロインは敵国の民衆の前で、ひったすらに凌辱されまくる。ほぼ全ページが凌辱されるシーンである。
ところが、最後の一ページで急に逆転が!
まるで9回裏からの逆転ホームランで優勝を決めたかのごとき超展開なのである。
どんな凌辱劇を描こうとも、ちょっとエロマンガでは用いられない余韻を残した展開に持ち込もうとする、ゆたかめ氏。ペンネームは冗談みたいなのに、すごく真面目な描き手といえるだろう。
(文=ピーラー・ホラ)