「すっごいリアル! 本当に私が目の前にいるみたい!」
ヘッドセットを装着した香純ちゃんは、動画を再生した途端、嬌声を上げた。
「私にも見せて」と、香純ちゃんのマネージャーが視聴している最中、
「ねえ、監督の連絡先、教えて」
香純ちゃんから誘われ、連絡先の交換をすることになった。交換しながら、これは一体どういう意味なのだろうか、とオレは疑問に思った。仕事面でいえば、香純ちゃんがオレの連絡先を知る必要はない。マネージャーを通せばいいのだから。妙に誘い掛けるように微笑んでいる香純ちゃんの表情も引っかかった。
悶々としていると、視聴を終えたマネージャーがヘッドセットを外し、
「想像以上の出来映えですね。好評なら、第2弾もお願いします」
興奮気味にそう言った。
「ええ。ウチの上層部もそのつもりでいます。その時は、またよろしくお願いします」
頭を下げ、退室しようとすると、
「監督、またね」
マネージャーの目を盗むようにして、香純ちゃんがウィンクをしてきた。それは、この世の全ての男を魅了できるのではないかと思えるほどに魅力的なウィンクだった。
大きな仕事が一段落つくと、オレはいつも、ラグジュアリーなホテルに部屋を借り、のんびりと過ごすことを自分へのご褒美としていた。そして、香純ちゃんのVR動画がひとまず完成した今、自分にご褒美を与えることにした。
ヒルトンの一室に部屋を借り、ルームサービスで頼んだシャンパンボトルを半分ほど空けた頃、携帯電話が鳴った。香純ちゃんからだった。
「もしもし?」
緊張と喜びが綯い交ぜになった声で応じると、
「監督? 今、どこ?」
「え、今はホテルだけど……」
「どこのホテル?」
「ヒルトン」
「何号室?」
「何で、そんな――」
「何号室?」
有無を言わせない口調で、香純ちゃんはそう繰り返した。部屋の番号を伝えると、
「わかった。じゃあ、今から行くね」
「え、今から? ここへ?」
オレの質問に答える前に、香純ちゃんは通話を切ってしまった。しかし、まさか、香純ちゃんが本当に来るわけがない。イタズラだろう。そう思い、オレは再びシャンパンを飲み始めた。しかし、シャンパンボトルを全て飲み干した頃、突然、ドアがノックされた。
まさか、と思いつつ、ドアスコープを覗くと、そこには、帽子を目深に被り、マスクをした、青いワンピース姿の女性が立っていた。そして、その女性は、オレがドアスコープを覗き込んでいるのを察したのか、マスクをずらして顔を見せた。それは、紛れもなく、香純ちゃん本人だった。魚眼レンズ越しでも、その可愛さは一向に損なわれていない。
「香純ちゃん、なんで?」
ドアを開け、そう訊くと、
「シーッ!」
人差し指を立てながら、香純ちゃんはオレを部屋へと押し込み、素早くドアを閉めた。そして、マスクを外すと、
「監督に会いたくなって、来ちゃった」と抱きついてきた。
「来ちゃった、って、まずいよ、香純ちゃん」
「なんで? 嬉しくないの?」
オレの肩から顔を離すと、香純ちゃんはムッとした表情で見つめてきた。僅か数センチの超近距離。その顔が、あまりにも可愛くて、オレの頭の中は一瞬、真っ白になり、はちきれんばかりの勢いでチンポが勃起した。そして、その変化は、体を密着させている香純ちゃんにも伝わってしまった。
「あれ?」
ムッとした表情から一転、香純ちゃんはSっ気たっぷりな笑顔を浮かべると、
「あれれ、監督ぅ~、おっきしちゃいましたねぇ~」と、馬鹿にしたような口調で、オレのチンポをむんずと掴んできた。