まめぞう『アナルはセックスに入りますか?』(三和出版)は、タイトルに偽りなく、オールアナルセックスをテーマにした短編集である。
三和出版といえば、かつては「お尻倶楽部」のような専門誌も出していた出版社。ゆえに、「ちょっとアナルを描いてみました」みたいなシャレで済まされるハズがない。ひたすらガチンコのアナルセックスが描かれるのである。
さて、同人から商業まで活躍する、まめぞう氏の描くアナルセックスは、プレイの内容よりも雰囲気を重視したスタイル。とりわけ、ヒロインの造形を一本調子にせず「あんな子も、こんな子もアナルセックスを楽しんでいる」というべき世界を生み出そうと努力しているのである。
しかも、そうしたヒロインの設定をわかりやすく読者に提示してから、存分にアナルセックスシーンを楽しんでもらおうとするプロットの優しさが光っている。
収録作でまず読んで欲しいのは「勘違いです*お嬢様」。この作品、かつて両親のアナルセックスを覗き見したお嬢様が、彼氏とのセックスで当たり前のようにアナルを捧げようとしてしまう物語である。
ここで描かれるセックスは、童貞と処女のカップルによる初体験なのだが、どうでもよいところがマニアックなのがよい。どういうことかといえば、いよいよ初のセックスに取りかかろうとする段階で、彼氏は「脱がないでもよいかな? 的な箇所だけでも残して」とお願いしてくるのである。
というわけで、セックスは半脱がせで……になる。人生で二度は訪れない体験の直前なのに、どれだけ余裕なんだよとも思うが、おかげで読者の興奮度も高まるのがありがたい。
さらに、なぜそこにこだわるのだろう……でも、うれしいと感じさせてくれるのが「叔父さんがオジサンになったら」である。
ここでは、30歳(=オジサン)になってしまった主人公と、幼い頃に結婚の約束をした姪との、ラブラブアナルセックスが描かれる。そもそも、ヒロインである姪が何年にもわたって子どもができないセックスをするために、お尻の訓練をしてきたという、ぶっとんだ性格なので、がぜん読み応えがある。
そのまま、実用シーンはじっくりと描かれるわけだが、事後に叔父と姪だから結婚できないという主人公に、姪が用意周到に、そもそもの血縁関係を延々と語り「だから結婚できる」というシーンがやってくる。このシーン、えらく長いネームで語られるんだが、それによって読者も、登場人物と同等にハッピーエンドの満足感を得られるという仕様なのである。
こんな感じで、どんなシチュエーションであっても、ハッピーなアナルセックスを描こうとするのが、まめぞう氏の特徴。アナルとか使うと、ちょっとダークな展開になりがちだと思うのだが、これは新しい!
ぜひ、この独特なアナルワールドを体感してもらいたいと思った。
(文=ピーラー・ホラ)