コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像1女性向けジャンルが集まったコミケ2日目。

 匂い! それは、極上のリピドー。そう、甘い乙女、瑞々しい肢体から放たれる匂い。ささやかな食卓の時も、奮発した食事の時もお腹を満足させてくれる匂い。そうさ、ぼくたちの生活はいつも匂いに包まれている。でも、夏の東京ビッグサイトだけは違う。8月11日午前、コミックマーケット二日目。開会から、一時間ほどが過ぎた会場には、様々な匂いがあった。その中でも、ふっと鼻を突く匂い。

 肉!肉!肉! 肉の匂い、肉の焼ける匂い。そうさ、いつもは食いしん坊たちがグーッとお腹を鳴らす肉の焼ける匂いが、会場の一角にあった。買い物に忙しい参加者たちが、かりそめに腹を満たすための食事。その時に、ちょっとでも満足して欲しい。そんな気持ちで店の人たちは肉を焼いていたに違いない。秋葉原でもお馴染みの、チキンケバブにするためにね。でも、もしかして彼らもちょっとした後悔をしていたかもしれない。「ああ、なんだって、チキンケバブを売ろうなんて思ったんだろう」と。

 そうさ、秋葉原では甘美な空腹を誘う匂いも、例年以上に暑すぎるコミックマーケットでは違ったのだ。蒸発していく無限の汗の臭い。それと肉の焼ける匂いとが、こんなに相性が悪いとは……。ところが、まだ匂いの女神は、彼らを見捨ててはいなかった。そんな、ともすれば不快にもなる匂いが、鼻をつつつくのは一瞬。その先は、本当に甘美な匂いに満ちていたのだ。

 コスプレ写真集島というね。

 二日目は女性ジャンルが中心の女の子の日。そんな日にどんなレポートを書けばいいというのか。いつもコミケのたびに、取材腕章を受け取るために行列する、様々な取材者。同業者なのか、同業者じゃないのかわからない。ただ、せっかく書くのだから、誰かが書くような記事みたいなのを書いてもしようがない。だから、朝、国際展示場駅にやってきた編集者のアヤに、ぼくは、こう告げたのだ。

「考えたんだけど、今日、ぼくは美少女という設定で会場を歩いてみたいと思うんだ」

 真剣なまなざしのぼくに、アヤは心底呆れたという表情で、首を横に振る。

「よく聞いてちょうだい三文文士。アルテミス(『レディ・プレイヤー1』のヒロインのアバター)がコロラドでママと一緒に暮らしていなかったのは、あれが人が頭の中で考えたお話だからよ。残念だけど、それは叶わぬ夢なのよ」

 ああ、わかってるさ。いくらバーチャルYouTuberが流行しても。VRchatで、時間を削ってつくった可愛いアバター同士で抱き合ったとしても、それは夢。あちらの世界で、皮を脱ぎ捨てたとしても、現実は変わりようがないもの。そんなことは、とうにわかてる。

「あなたの今日の役割は決まってるわ。記事になるような読者の目を引くネタを探すこと、コスプレイヤーなんてどうかしら」

 依頼された仕事であれば、編集者の判断は、おそらく正しい。さっそく、ぼくら会場へと足をすすめる。アヤの「うちのボスを失望させないでちょうだい」という、小言を聞きながら。
 
 こうしてやってきたコスプレ写真集島で、出迎えてくれたのが、匂いだったというわけだ。一口にコスプレといっても、その内容は色々。もっとも多いマンガの同人誌であっても、ひとつとして同じものがないように、今は、ここにも確かに「自己表現」がある。

 自分で衣装をつくり、世界観を考えて、被写体となる。時には自分も撮影をする側に回る。売り方の主流は、データを収録したROM。レコードやCDがそうであるように、ジャケットの装幀にも手は抜けない。自分自身を彩るためだけじゃない。1,000円や2,000円。けっして安くはない金額を、同人誌即売会になにかの夢を求めてやってきた人に出してもらうのだ。

 たとえ、ひとつでも妥協なんてできるわけがない。そして、日々の告知。たいていの人がやっているのはTwitterを使ったファンとの告知と情報拡散。毎日、見てくれる人が飽きないようにと、相手が喜ぶことを考えて写真や新作の情報。そして、制作中の衣装のことをツイートする。そう、彼女らは単に立っている人形ではない。このコミックマーケットという場所は、年に二回の日々の積み重ねを肌で感じるハレの日。じっと見ていればよくわかる。どんなに扇情的な衣装でいても、新作を求めて人が行列しているとは限らない。

コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像2名古屋で活動する幸和あいき(@14_akcs)さん。コスプレROMのほか、海外輸入のダイエットサプリの評論本も頒布していた。
コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像3『ガルパン』アンチョビのコスプレROMを頒布していた台湾レイヤーのチョコ(@qchocolate)さん。
コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像4ロシアのコスプレイヤーのUsagi Kat(@Kat_Usagi)さんは、ロシアのコスプレ雑誌「ProCosplay」を頒布。「ProCosplay」はかなり写真のクオリティが高かった。

 人気のコスプレイヤーは、新作を求める人も、手伝ってる男性スタッフも含めて、すべてが華やかで楽しそう。誰一人もでしゃばってはいない。なにかの偶然で始めたコスプレ。やっぱり、偶然で始めたROM。偶然の積み重ねて出会い、手伝うスタッフやファンたち。コスプレ写真集もまた、気がつけば、全員が参加者というコミックマーケットの原点の中に溶け込んでいたというわけさ。

コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像5赤木クロ(@akagikuro)さんは、なんとコスプレイヤーを題材にしたエロ同人も頒布。才能がすごい。
コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像6『FGO』と『艦これ』のコスプレROMを頒布していたパティー(@PattieCosplay)さん。

 ああ、コスプレイヤーは明日への生きる希望のための、かりそめの止まり木。だから、ずっと彼女らにコスプレを好きでいてほしい。そんな思いを形にして伝えている男にあったのはコスプレ広場。カートに重そうなクーラーボックスを積んだ男は、写真撮影を終えると幾度もお礼をいいながら、クーラーボックスの蓋を開く。

「なにがいいですか」

 その声は、普段のおかずを買ってる商店街の店のような、親しみのある言葉。けっして、押しつけがましさはない。クーラーボックスの中は、キンキンに凍った、飲むアイスクリームやペットボトル。

コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像7神はそこにいた。

 頑張って表情を作っていたコスプレイヤーの顔。陽に焼かれて赤くなった顔が、刹那に華やぐ。

「あなたは、もしかして神ですか?」

 ぼくは、思わずそんな言葉を口に出す。でも、男は自尊心を出したりしない。

「撮影させてもらってるんだ。これくらいしなきゃ」

 生きる希望の糧は、どこかに必ずある。そんなことを考えた。
(取材・文=昼間たかし)

コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像8ドイツ出身のレイヤー・ユリア(@xxMomoi)さん
コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像9なゆた(@cos_nyayuta)さん/『ヨスガノソラ』春日野穹
コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像10近衛まり(@knemari)さん/『FGO』マシュ・キリエライト
コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像11アメ(@ame_cosak)さん/『艦これ』酒匂
コスプレイヤー……それは、明日も続く日常のかりそめの止まり木【C94・2日目レポート】の画像12人気バーチャルYouTuberのレイヤーの周りには人だかりが。輝夜月レイヤーが多かったように感じた。

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