■S研に所属しつつCASに入り浸る 数々の個性的な仲間との出会い

1411_ahoboy2.jpg博史池畠氏が監督を務めるロボットガールズZ公式サイトより。

 ちなみに、S研の現在の正式名称はSFAである(本稿では当時を尊重し、あえてS研とする)。池畠監督はS研に所属しながら、漫画・アニメーション研究会ことグループCAS(以下、CAS)にも入り浸っていた。CASは『アオイホノオ』にも登場するマンガ家・矢野健太郎さんが創始したサークルとして知られる。

池畠「S研は当時そんなに人がいなくて、人が来ない時はCASのBOX(部室)にいました。CASのBOXはS研の2つ隣でもあったので。後輩には僕がCASの部員だと思ってる人が多いみたいですね。『しょっちゅう来てて部員っぽいけど、部会にも合宿にも来ないし』って思われてたんじゃないかな……。当時のCASの部長は佐藤利幸さんでした」

 佐藤さんは現在、イラストレーター・アニメーターとして活躍している(11月21日公開の日本アニメ(ーター)見本市第3弾『ME!ME!ME!』には原画で参加)。CASの部員で池畠監督の同期には、アニメ作家の山岸たかおさんや石川直哉(石川プロ)さんがいる。山岸さんもアニメーターとして、石川さんはOVA『くっつきぼし』(10年)の制作などで活躍している。

池畠「S研とCASで毎年1回合同上映会をやってたんです。初めて山岸さんや石川さんと会ったのは確かその時でしたね。いつの間にか、僕のあだ名も決まってました。CASの会議で『アイツはアホなんじゃないか?』『アイツは“アホボーイ”だ』って【註:池畠監督は“アホボーイ”を絡めた名義で作品を制作することもある】。上映会のタイトルは『骨髄ドリル』ですけど、今もやってるみたいですね。『骨髄ドリル』ってタイトルになったのは、僕らのはるか上の先輩で、当時のS研の部長とCASの部長【註:足立慎吾さん。最近では『ソードアート・オンライン』のキャラクターデザイン・総作画監督を務めた】とが企画したからのようです。僕らにしてみれば『なんだ、このタイトル?』ってことで変えようって話もあったんですが、先輩が『いや、このワケのわからんタイトルのまま続けるという嫌がらせをしたほうがいい』ってことで、いまだに続いてます。今の部員のツイートとか見てても『「骨髄ドリル」そろそろ作品を作らなきゃ!』とかあって、『まだやってんだ!変えろよ!』って(笑)。

『骨髄ドリル』は夏でしたが、春は新入生歓迎上映会があって、秋に学祭。僕らの代はさらに『冬にもやろうぜ!』って、『丸目V』って上映会もありましたが、定期的に『作らなきゃ』という使命感があって、それに合わせてひたすら作品を作ってました。学祭用に制作したのを、そのまま課題用として提出します。見てもらって反応がダイレクトにくるのがすごくうれしくて、それがやっぱり学生ならではですね。さすがに3回生、4回生で出す時は、夏ぐらいに『こういうコンセプトです』って制作要項も教授に出してるんですが、仮に全然違う作品を課題に出したとしてもダメってことはないです」

 先にも話に出たように、2000年前後には自主制作ブームが起きていた。90年代後半の3DCGブームから2Dやコマ撮りを含めた学生作品が増えていった時期でもある(参照:水江未来さんインタビュー)。なかでも池畠さんたちは「CGアニメコンテスト」を主戦場としていた。「CGアニメコンテスト」には入選者の物販スペース「作家市」もあり、当時はCAS名義での出店も行っていた(ちなみにほかの大学では、武蔵野美術大学のアニメーションサークル・MAUNACも出店していた)。

池畠「『CGアニメコンテスト』には在学中から出してました。出そうと思ったのは、第13回(01年)に石川さんの『らめんちゃいにゃん』が外伝大賞になったからで、意外と僕らのレベルで通用するんじゃないかと思って。僕の『スペード5』は卒業制作です(『スペード5』は第16回で外伝に選ばれた)。当時もうちょっとYouTubeやニコニコ動画のような動画配信の環境が整ってたら、もっとアピールできて自主制作で食えてた勢いがあったかも。自主制作と動画配信のムーブメントがズレてて、ちょっとタイミングを逃したかな……」

「CGアニメコンテスト」の外伝とは、入選には至らなかったが面白い作品を紹介する枠である。入選以上では、第14回に山岸さんが『絶対無双麻雀マン』で佳作、石川さんが『魔法のチョコレート』で入選、佐藤さんが第15回に『超無敵メカピーポくん THE MASTER OF UNIVERSE』で入選している。

 ICAF(インター・カレッジ・アニメーション・フェスティバル)で上映されることはなかったものの、池畠さんたちの作品はほかの大学の作品よりもエンターテインメント色が強く、それらの作風にハマる人も少なからずいた。ほかのクリエイターでも、“かぼすちゃん”こと『別府鉄輪地獄変』シリーズなどの青木隆志さん、『拳闘巫女こぶしちゃん』などの大木奈翁さん、『ルール』などのかみやろんさん、『ウシガエル』などの塚原重義さんなどが、池畠さんたちに注目していた。また当時は“Flash黄金時代”でもあったが、そことは一線を画していた(青木さんと塚原さんはFlashユーザーだったので、ファン層が重なっている)。

池畠「(僕らの周りでも)Flashに手を出してたと思うんですけど、(実写も含めて)今まで自由にやってたのに制約が多くてFlashから離れちゃう人が多かった気がします。After Effectsは高くて使えなくて、Photoshopで描いてPremiereで編集してたんですよ。Premiereは実写でも使えるという理由もありましたが、その2つがあればギリギリアニメはできます。アニメーションレイヤーとかないから、とにかく送り描きで描いて描いてパーツごとにレイヤーに置いてました。

 今でもたまに自主制作が好きな人から『当時見てました』って言われる作品『マヴ』は、卒業間近に作りました。ワケのわからないシュールな演出があった時に『「マヴ」的な展開が』って言うと通じたりとか(笑)」 

 先の作風にハマったクリエイターの中には、最近ではテレビシリーズ『キルラキル』(13年)で副監督を務めた雨宮哲さんもいた。雨宮さんが監督したショートシリーズ『インフェルノコップ』(12年)は、まさに『マヴ』的な演出を体現していた。雨宮さんは来春の『ニンジャスレイヤー フロムアニメイシヨン』で監督を務めるので、これまた期待が高まる。

 後編では、カプコンのプロデューサー・綾野智章さんとの逸話や雨宮さんと企画したアニメーター発掘プロジェクト「ABE48」の経緯などを伺う。
(取材・文/真狩祐志)

後編へ続く

■博史池畠(ひろし・いけはた)
大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業後、アニメ業界入り。現在はさまざまな作品の監督・演出・絵コンテを手がける。監督としての代表作は『ロボットガールズZ』。「アホボーイ」名義で自主制作アニメ活動も行っており、「CGアニメコンテスト」で外伝大賞や会場賞を受賞している。

■『ロボットガールズZ』
http://www.robot-girlsz.com/

『アオイホノオ』から20年後の大阪芸大生は今?『ロボットガールズZ』監督・博史池畠インタビュー【前編】のページです。おたぽるは、インタビューアニメ話題・騒動の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -
PICK UP ギャラリー
写真new
写真
写真
写真
写真
写真

ギャラリー一覧

新しいTシャツが出たんだ。ほら、遠慮せず見ていけよ
新しいTシャツが出たんだ。ほら、遠慮せず見ていけよ
俺も黒田悠斗さんみたいにマッチョになりたい!
「貧乳の日」なら私もツイートできるかな…