ある時はロックスターとしてステージに立ち、ある時はエロゲーブランドOVERDRIVEの代表としてゲームを作り、ある時はファッションやグッズをプロデュースし……と何足のわらじを履いているのか分からないほど多方面で活躍されている竹内“bamboo”博ことbamboo氏のロックユニット「milktub」が4thアルバム『春夏冬ROCK’N’ROLL』を1月22日にリリースする。リリースはアニソン系アーティストでおなじみのLantisからだ。

 milktubは2000年前後より美少女ゲームに楽曲提供するなどをして活躍していたものの、2008年『BPM200 ROCK’N’ROLL SHOW』でメジャーデビューし、その後『バカ・ゴー・ホーム』がTVアニメ『バカとテストと召喚獣』のエンディング曲にりアニメロサマーライヴに出演、最近では同じくTVアニメ『有頂天家族』のオープニング曲を担当するなど、活動の場をどんどん広げている。なんとキャリアとしては20年クラスのベテラン実力派バンドなのだ。

 そんなmilktubが3年ぶりのニューアルバムを出すということもあり、早速bamboo氏に話をうかがいに行き、milktubのこと、OVERDRIVEのこと、エロゲー業界のことについて語ってもらった。

―約3年ぶりとなるニューアルバム『春夏冬ROCK’N’ROLL』ですが、相変わらずパンクロック全開の仕上がりですね。

bamboo:milktubはドーピングロックンロールですからね。今回もアッパーで聴くと元気になる曲ばかりです。

―『春夏冬ROCK’N’ROLL』の聞き所はどこになりますか?

bamboo:全曲ですね。落ち込んだ時に聞いてもらえれば元気になってもらえるんじゃないかと。特に、『有頂天人生』(編注:TVアニメ『有頂天家族』のOP曲)なんかは良いもの書けたと思います。アニメのキャラのスタンスと、実際の自分のスタンスがうまくシンクロしてくれたんで。

―『有頂天人生』はシングルCDの動きも良かったそうですね。

bamboo:アニメの主題歌ってこともあって、『有頂天人生』はCDもかなり数字が動いたけれど、それ以上に配信ダウンロード数が動いたんですよ。アニメを見て、いいなと思ったリスナーが安価な値段ですぐに買える配信っていうのは昔に比べるとミュージシャンにとってすごく重要な存在になりましたね。

―ちなみに配信とCDの場合、ミュージシャンの収益はどちらが大きいのですか?

bamboo:CDの場合カップリング曲があるから、曲数の関係で印税率は高くなるけど、その辺はあんまり気にしませんな。曲をたくさん聞いてもらえて、ライブに来てくれる人が増えてくれた方がありがたいから。

―アルバムについて話を戻しますが、ドーピングロックンロールとはいえ、『バカとテストと召喚獣にっ!』第七問のEDになったバラード調の『バカと個室と孤独飯』も収録されていますよね。

bamboo:あれはトイレの個室で孤独に卵かけご飯を食べる人の歌なんですよ。初めてのムード歌謡っぽい曲です。

―設定だけでなんだか寂しくなりますね…。

bamboo:でしょ? 今回は他にもバラードというか、悲しい曲があって新曲の『大人チャレンジ』なんかもそうですね。

―『大人チャレンジ』ですか? 聴いた感じテンポも速いし、ノリノリでmilktubらしい曲だと思ったのですが。

bamboo:自分が10代の頃って、20代で結婚して、30代で子供ができて、40代で家を買って…みたいな人生を想像していたんですよ。だけど今の現在全くその気配がない(笑)。そこが悲しいというか…その気持ちを曲にしました。

―(苦笑) bambooさんにお子さんはいらっしゃらなくても、仕事の関係から若い声優さんと絡むようなことも多いんじゃないですか?

bamboo:そうですね。最近は特に増えました。下手すると10代半ばの子とかもいて、年の差が自分と25歳違うこともある。そういう場合は、子供もいないくせに「大丈夫? ちゃんとご飯食べてるか?」とかお父さん目線になっちゃうんですよ。女の子の声優とか、すごくかわいいけれど、付き合いたいとかそういう目では全く見れない(笑)

―アルバム全体を通してに参加しているサポートミュージシャンはどんな方たちなのですか?

bamboo:アルバムは、タイアップ以外の曲は何年も一緒に仕事をして気の合った連中といつも作っているんですよ。ただ、メインでいつも関わってるメンバーは人間としては相当アレですよ。酒癖が悪かったりで(笑)

―サポートミュージシャンとはいえ、メンバーはだいたい固定なんですか?

bamboo:そうですね。レコーディングもライブも同じ。バンド感って一緒にやり続けないと出ないじゃないですか。だからあんまり変えたくないんです。

―milktubはライブバンドとはいえ、実際の年間ライブ本数はそれほど多くはないですよね。何か理由があるのですか?

bamboo:milktubの場合、基本がゲーム音楽なわけですよ。だからゲームができないと曲もないわけで、もちろんゲーム制作中はライブ活動を控えるから、ゲームが完成したらそれに便乗してライブをするってスタンスになるんですよ。

だから必然的に多くはできない。昔っから漠然と考えてたんですが音楽をたくさんの人に聴いてもらためにライブを年間100本やるのも良いんだけど、ゲームを作って買ってもらって、流れる曲をたくさんの人に聴いてもらうのも「自分等の作った音楽を聴いてもらう」という事においては結果的には変わらないかなって思うんですよね。と言っても最近はそういうのと関係なく、面白い企画が思いついたらライブをしたりするようになったけど。

―面白い企画とは例えばどんなことですか?

bamboo:「抱き枕奇祭」とかですね。前にニコ生でライブ中のサイリウムが問題になったことがあったんですよ。

サイリウムって硬くて液体入ってるし狭いライブハウスで振ったりするとすっぽぬけて危ないじゃないですか。だったら同じようなもので柔らかければいいじゃねってことになって、思いついたのが抱き枕。ライブには多くの人が集まりましたよ(笑)

 あとはスク水を着てライブに来たら女性はキャッシュバックというキャンペーンはよくやってます。ただし男がスク水を着てきたら倍額。でも、倍額だって言ってんのにスク水で来るヤツがいるんですよ。もうそいつらのためにやっているような企画ですね(笑)

―milktubのアルバムでAKBのように特典を何バージョンも付けて販売するなんてことは考えたことありますか?

bamboo:ないですね。めんどくさいしデザイナーさん死んじゃう(笑)

―特典をたくさん付けて販売するAKBのような販売戦略に批判が出たりしますが、ミュージシャンとしては何か感じることはありますか?

bamboo:純粋に、儲かってて羨ましいなって。AKB商法って確かに批判されるけど、エロゲーの販売に置き換えたら、実はそんなに変わらなかったりするんですよ。

新作を発売する際にはメーカーは特典をたんまり付けるわけで、それとどう違うのって訊かれたら、実は違いなんてない。エロゲーだって特典を売っているような面がある。本来売りたいものよりも、特典の価値の方が大きくなってしまったのは本末転倒なんだけど、それが是か非は置いておき、AKBなんかの売り方は商売としては上手いですよね。

―ゲームについてお聞きしますが、昨年発売された2作『僕が天使になった理由』『グリーングリーン』の売れ行きはどうだったのですか?

bamboo:正直に言うと、目標の7〜8割ってトコですかね。グリーングリーンに関してはクラウドファンディングで(編注:インターネット等で資金の提供や協力などを行うこと)作ったこともあってか、赤字にはならなかったけど、『僕が天使になった理由』はちょい赤でした。開発費をかけすぎたんでしょうね。

―OVERDRIVEの作品だと開発費はいくらくらいなんですか?

bamboo:うちは3500~5000万円くらいかな。

―『僕が天使になった理由』が発売になった後、ご自身のブログへの書き込みが発端となって、引退騒動になりましたよね。

 

bamboo:引退するつもりじゃなかったんだけど、あの当時、ゲームを作る気がなくなったのは確かですね。ソフト発売直後に数万本も違法アップロードされたんですよ。莫大な金をかけて作ったものが、その直後に盗まれてばらまかれたみたいなんだから、そりゃ著しくテンション下がりますよ

 でも、海外じゃ当たり前に付いていてるコピーガードを付けないで不特定多数に販売する方法にも問題はあるんですよね。セキュリティが甘ければそれを突破してくる奴がバンバン出てきてもおかしくない。だからって訳じゃないですが、いまの美少女ゲーム業界がやっているパッケージビジネスはそろそろ限界来ちゃってるんじゃないかなって思います。

―違法アップロードに対するOVERDRIVEなりの対応策などはあるのですか?

bamboo:クラウドファンディングなどでサポートしてくれる方やファンにはパッケージ販売を継続して、それ以外はアプリや他の形で提供するとかで考えたりはしますよ。

ざっくり言うとアプリはチート(編注:第三者のプロが手を加えて改造すること)できるけど、アカウントに紐づいてるから、課金システムができあがっているでしょ。だからその時代に合った作品の出し方、あり方に変えていかなくちゃいけないよね。エロゲーも無料で開放して、課金制にしていくって形は昔は「課金なんて!」って批判されてたけど今だったらわりとアリかもしれませんしね。

―引退騒動の発端となったとも言える「商業作品としてのゲームリリースはおそらく僕天でラストか、あと1本いけるかいけないか」と発言した真意を今一度説明してもらえますか?

bamboo:OVERDRIVEとしては作品を作り続けますよ。ただ、流通から借金してゲームを作って、でも顔も知らないようなやつらに違法アップロードされて損をする、っていうこのイビツな流れには乗らないぞってこと。クラウドファンディングなら流通から借金する必要ないですから。これって言うほど簡単じゃないけど、しがらみの中で死ぬなら、自由にやって死ぬ方を選択した方がいい。

―アーティストとして、OVERDRIVEとして、2014年の目標を教えてください。

bamboo:まずは1月25日にディファ有明で開催される「OVERDRIVE暴れ祭り」の成功ですかね。グリーングリーンのリメイクと共に、8年ぶりにグリグリシリーズ縛りでライブで演奏します。チケットはまだ発売中ですので昔からファンの方からも最近ファンになった方も是非遊びに来て欲しいですな。

 あとはLantisからはアルバムを6969枚売ったらmilktubの扱いが格段に良くなるって言われたんで、なんとかその枚数は売りたいなと(笑) それに今年は新人育成をしていきます。これは急務だと思っていて、ブログにも少し書いたりしたけれど、プロのシンガーになりたいっていう熱い子を募集中です。それとアルバムリリースに伴ってAiRI(編注:bamboo氏の個人事務所であるSTUDIO696所属アーティスト)とのカップリングツアーを成功させることですかね。3/2には「抱枕奇祭2014」もあるし。

 OVERDRIVEとしては、表立った活動はしばらくお休みして、次の作品について詰める予定です。またバンドものを作りたいですね。あとは2016年のオリンピックイヤーに向けても何か各国の選手が競いあうものなんか作りたいな。その年は他のメーカーからも似たようなものが出てくると思いますよ。乳輪をオリンピックの5色に染めた子たちが出てくるとか(笑) 

そういうくだらないことは絶えず考え続けていきますよ!