例えば、私は自分のコラムに添付しているイラストが「成人向け同人誌’」に使われた日には(どのように使えるのか想像もつかないですが)、差止の警告を出す決断をするのに3秒、そして警告が無視されたら、たとえ刑事告訴になろうとも、最後まで闘うだろうという確信があります。

●N次著作の面倒くささ


 さて、これまでは「他人の著作に依拠して創作された創作物」の関係についてのみお話ししました。これが、二次的著作(第28条)、翻案等(第27条)、または複製(第21条)に該当するかはケースバイケースですが、本コラムでは、これら「他人の著作に依拠して創作された創作物」を便宜的に「二次的な著作物」と呼ぶこととします。

 しかし、単純な「二次的な著作物」であれば、それは著作権者との関係を調整すれば足りますが、大抵の場合、著作物とはそんな単純な構成をしていないのです。これが最近、よく聞くようになった用語「N次著作」です。

 ここで一度、「N次著作」と言われているものを、例題を使って整理してみましょう。

筆者提供

 まず、私、江端智一が「『初音ミク』主演映画」に触発されて、その映画のストーリーに依拠した小説「ミクミク物語」を創作したとしましょう。私が、この小説を、引き出しの奥にしまいこんで、時々取り出しては『私って、なんて才能があるのだろう』と自分の作品に、自分一人で涙するのであれば、別に何もする必要がありません。

 しかし、これを自分のホームページに公開するとなれば話は別です。対価を得ている/得ていないは問題にはなりません(何度も繰り返しますが、この点は重要です。無償ならばなんでも許されるというのは、完璧な勘違いです)。この場合、私は、まず映画の著作権者(上図では三次著作権者)に、自分のホームページへの公開の許諾を得なければなりません。なぜなら、私は小説の著作者、著作権者ではありますが、同時に、映画の著作権者もまた、私の作品に対して著作権(翻案権)を持っているからです。

 さらに、この映画が、二次著作権者のつくった楽曲を使っていて、さらに、私も私の小説の中でその歌詞を使っているなら、二次著作権者の許諾も必要となります。
そして言うまでもなく、私の小説の中に登場する「初音ミク」は、一次著作の「初音ミク」の画像、または二次著作の「初音ミク」を演じた映像に依拠することになるので、当然に「初音ミク」の画像の権利を所有している、クリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下、クリプトン社という)の許諾も必要です。

「創作する」というだけでも大変なのに、上記の例では、私は3人の権利者に頭を下げて、そして必要なら対価を払って許諾を得なければなりません。N次創作物をつくり出すことを、単に個人(の机の引き出しの中のノート)で楽しむのであれば、誰の許諾もいりません。しかし、それを世の中に出したいと思った瞬間から、果てしない「お願いツアー」に出発しなければならないのです。
(文=江端智一 BJ2013.4.10既出)

※本記事へのコメントは、筆者・江端氏HP上の専用コーナーへお寄せください。

※後編へ続く。

同人誌は著作権侵害? 回避は簡単なのになぜ事件化&泥沼化するのか?のページです。おたぽるは、マンガ&ラノベ出版業界事情の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

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