――東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月"不健全図書"を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない! このコーナーでは、"不健全図書"に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング(群衆による資金調達)ならぬ"不健全図書"クラウド・レビュー(群衆による批評)、はじまり、はじまり~!
(以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用)

【今月の指定図書】

【今月の不健全図書レビュー】三条友美先生いわく「犯人は早見純だ!」『劇画あまとりあ』が有害指定される素敵な社会の画像1
『劇画あまとりあ』【今月の不健全図書レビュー】三条友美先生いわく「犯人は早見純だ!」『劇画あまとりあ』が有害指定される素敵な社会の画像2(久保書店)
※モザイクは編集部によるもの。

 2月の不健全図書指定で話題になったのが『劇画あまとりあ』(久保書店)であります。

 2,400円もする豪華本は、ダーティ松本、早見純、三条友美というエロ劇画の大御所3人の作品を収録。出版社の内容紹介には、こう記されています。

 ダーティ松本、早見純、三条友美。マンガ界の極北に屹立し、ほんとうのことを描き続ける3人の劇画天使たち。フランスの第9の芸術BDに肖った造本設計で蘇る傑作短編アンソロジー。モーリー・ロバートソン[ジャーナリスト]、会田誠[美術家]、ロマン優光[ミュージシャン]、永山薫[批評家]が偏愛を綴ったエセーを特別寄稿。それは恋文(ラブレター)であり、檄文(マニフェスト)。

 なんだかよくわからんが、とても実用とはほど遠い高尚な感じがします。とはいえ、中を見れば一目瞭然。これは青少年に悪影響を及ぼすのは間違いないと思います。

 なにせ、女子高生がレイプされるだけならまだしも、レイプされて殺されるわ、リストカットでエクスタシーを感じているわ、収録作が危険すぎます。【修整が甘く、性描写も多い。また、一部残虐な描写もあり、指定やむなし】【修整がなく露骨で、また、残虐性も高い】という指摘には、ぐうの音も出ません。指定非該当とする意見では、定価が高いことを理由に青少年は手に取らないと主張しますが、手に取った時の影響は計り知れない気がします。いやいや、むしろこういうのが不健全だと思われていない社会のほうがヤバいような......。

 そんなことを読み解いているうちに、今回ばかりは作者に興味を持ってしまうのではありませんか。中でもとりわけ興味を惹かれるのが、女子高生がリストカットでイキまくった挙げ句に、妖しげなカルトにハマっていく姿を描いた三条友美先生の作品です。この作品、まったくセックスしていないゆえに、ヤバさが際立つのです。

 エロ劇画の世界では、超ベテランの三条先生ですが、文字通り「極北」というべき作品をいくつも生み出しています。中でも『白の黙示録』は看護婦のヒロインが救世主として目覚めた挙げ句に「キリストは女だったが、男たちによって歴史を改竄された」とか、トンデモな歴史の真実が明らかになり、女が男を支配する女権国家が誕生するというストーリーです。

 もはや、国民国家のシステムの中で議論される青少年にとって有害か否かの問題など吹き飛びそうな作品を描き続けて来た三条先生。今回の指定を、どのように受け止めているのか、ぜひ聞いてみたいと思ったのです。

 というわけで、お話をお伺いしたのは東京郊外の某駅近くのオサレな喫茶店。よりにもよって、金曜日の夕方ということで恋人を待つ男女の心情を顧みることのない会話の応酬が続いたのです......新手のプレイか?

 そんな三条先生ですが、自分の作品が指定されたことには疑問をぬぐえない様子。なぜなら、この作品の初出はホラー雑誌「ホラーM」(ぶんか社)。すなわち、少女......小中学生の読者を前提として描いたものだというのです。三条先生は言います。

「セックスは描けない......だから、いかにしてセックスを描かずに少女や処女が読むと、何かわからないけれど、セックスに通じるような何かを感じるような、いかがわしいものが描けるかを試したのです」

 作品中には、リストカットした少女が、だらだらと流れる血を亀の甲羅に垂らしていくというシーンが登場します。これは、亀頭と処女の血の表象なのだというのです。なるほど、低い年齢層の読者にもわかりやすく描いた表象。それゆえに、東京都もヤバさを読み取りやすかったのかもしれません。いや、もちろんそこまで読み取れてはいないと思いますが。

 そんな作品ですが、最近Twitterで当時読んでいた女性読者から「性癖が歪みました」という感想をもらったといいます。なるほど「悪」とは断じることはできませんが、人生に影響を及ぼすだけのインパクトのある作品であることは間違いありません。

「最近は、明るくソフトなサブカル文化というものが支持を受けているようですが、私は影のものを引っ張り出して、いかがわしいものがなくなってしまうような風潮には反対です。影のものは影のままでなくてはいけないと思っています」

 すなわち、誰もがいかがわしいと思う、いかがわしい作品を描いてきた。これからも、そうしていきたいというのが三条先生の情念なのです。今回の単行本に収録された女のコがリストカットにハマった挙げ句に、リストカットしまくるカルト教団でさらに過激なプレイをしていくというストーリーにも、さまざまな想いが込められているのです。

「リストカットをしている少女は非常に多いのに、死ぬ気があると感じられる人は見たことがありません。自分の血で血文字を書いてネットに写真をアップしたりする少女もいます。それはなんだろうと考えたときに、血を流すことの快感、達成感や恍惚感があるのだと気づきました。そんな少女は純粋なんだけど、大人たちに利用されてしまうだろう......その利用される姿をカルト教団として描いたのです」

 なるほど、単にカルト教団を描くのが好きなわけではないのか、と思いきや先生は続けます。

「いや、カルト教団は好きなんですよ。新興宗教的なものってエロいと思うんですよ」

 突然、業の深さを開陳する三条先生。今も、熱心に創作に励んでいますが、もっと新しい作品も描いていきたいという熱い想いは止まるところを知りません。最近は、コンビニ売り雑誌ではセーラー服の少女の性行為シーンが描けないので、いかに性行為を描かずにセックスを連想させるかを考え抜いたりしています。それでも、昔に比べて過激な描写ができなくなった現状を嘆きます。

 オサレな喫茶店で一時間あまりを超えて繰り返された「セックス」「リストカット」等々の単語が入り交じる会話。その中で、幾度もページをめくっていた三条先生はついに『劇画あまとりあ』が不健全図書指定された真相にたどり着いたのです。

「やっぱり、早見純が悪いような気がするんだよな......だって前に一回指定されているしなあ。うん、犯人は早見純だ! 私は無実ですよ!」

 そうはいいつつも、早見先生の作品における少女をレイプした挙げ句に殺すオッサンの男根の勃起具合が、シーンによって描きわけている点を賞讃しまくる三条先生。その言葉からは、エロ劇画の大御所と呼ばれるのをよしとしないバリバリの現役感を感じました。

 東京都の不健全図書指定程度は、どこ吹く風の胆力の源は、この現役感にあるのでしょう。
(文=昼間たかし http://t-hiruma.jp/

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/668/668siryou2.pdf

劇画あまとりあ (AMATORIA)

劇画あまとりあ (AMATORIA)

表紙は美しいんですけどね……。

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