美少女ゲームというと、どんなイメージがあるだろうか? エロ? 萌え? オタク専用? たしかにそれもある。しかしそんな中にあって“読ませる”、いわゆる重厚なストーリーで楽しませてくれる作品が存在していることをご存じだろうか?

 例えば『AIR』『君が望む永遠』をはじめとする泣きゲーや、現在アニメも好調な『Fate/stay night』などは美少女ゲーム未プレイのファンにとっても耳馴染みがあるだろう。ただ、残念なことに「ストーリー重視」の作品(シナリオゲー)は近年徐々に減ってきていると言わざるを得ない。そんな流れに一石を投じるのが、1月30日に発売されるMOONSTONEの新作『夏の色のノスタルジア』だ。本作は重厚な物語が売りの一本となるとのことで、その辺りの話を中心にMOONSTONE代表の恋純ほたる氏、同作品のシナリオを担当する呉氏、そして原画を担当したやまかぜ嵐氏の3人にインタビュー。作品の話だけでなく、恋純氏らから見る美少女ゲーム業界の現状などについても聞くことができた。

■キャラクターは、だいたい“闇”を抱えている!?

――まず、2015年1月30日に発売される『夏の色のノスタルジア』のお話をお伺いしていこうかと思うのですが、この作品をひとことで表現するならば?

『夏の色のノスタルジア』/MOONSTON

恋純ほたる(以下、恋純) ひとこと……難しいですね(笑)。そうですね、ひとことで言うと「キャラクター同士の心の触れあいを楽しんでもらえる作品」ということになるでしょうか。

――心の触れあいですか?

恋純 もちろん明るいだけでなくドロッとした部分もありますが、キャラクターのさまざまな面が作品に反映されていくところが見どころですね。

 普通の美少女ゲームとは違って、主人公とヒロインがただ仲良しというのではなく、ひやっとする部分、(心の)冷たい部分も書かせてもらいました。それが人間的に見えるように。もちろんみんな仲良しではあるのですが、それでいてヒロイン同士で心の奥に何かを抱えているんです。

――最近のMOONSTONEというと『デーモンバスターズ~えっちなえっちなデーモン退治~』など萌え系に特化した作品が多かった印象ですが、今回はシリアステイストになりそうですね。

恋純 たまには違うものを作ろうか……といいますか(笑)。ブランド的な話でいうと「MOONSTONE Cherry」がありますので明るい路線はそちらで、『夏の色のノスタルジア』に間しては挑戦的な意味合いも含めて「読ませる系」でやってみようかと始動した作品なんですよ。

――ブランドイメージ面での葛藤はありませんでしたか?

恋純 たしかに最近は萌え系が多いですが、その中でもシリアスな展開もありましたし、ブランド創設時はシリアスっぽい作品を何本か作らせてもらっていました。なのでブランドイメージについては、それほどこだわった考えはないんです。いろいろと挑戦していこう、毎作品いろいろな挑戦をして前作よりいい作品が生まれれば、そんな気持ちはつねに持っていますけれどね。

――ところで、今お話にも出ました「MOONSTONE Cherry」を発足した理由をお聞きしてもよろしいでしょうか?

恋純 いくつか理由はあるのですが、エロ重視の作品をやりたい人間が会社にいたというのがひとつ。もうひとつは大艦巨砲主義でやっていくよりは、いろいろなジャンルの作品を作って、多くのユーザーさんにプレイしてもらいたいという理由。MOONSTONEでは正統派作品を作って一般向けも視野に入れながら、Cherryではエロ方面に強い作品を作っていくというのが今の方針です。

『夏の色のノスタルジア』/MOONSTON

――その中で、『夏の色のノスタルジア』は具体的にどのようなお話になるのでしょうか?

 3年ぶりに故郷に戻ってきた主人公とその妹が、かつての仲間と再会します。最初は昔のままの仲の良さに見えるのですが、徐々にヒロインたちが心に抱えている問題が明らかになっていき、それを受け止めて前に進んでいく、といった流れですね。

――舞台は春にもかかわらず、ひまわりが咲き乱れるミステリアスな雰囲気ですよね。

 今回は4章で構成されていますので、その辺は物語を進めてもらえれば明らかになっていく……としか……(笑)。

恋純 舞台が「枯れないひまわりに囲まれた学園」ということで、まずはその不思議な感覚を共有してもらいたいですね。

――ヒロインに関しては何人登場するのでしょう?

 4人になります。最初に紹介されるのが真鶴みさき。彼女は黒髪少女で凛としたイメージの少女です。ただ凛とした中にも、どこか心に闇を抱えているような……。ふたり目の真乗寺文音はお姉さんキャラ。基本は優しいお姉さんですが、やっぱり心に闇が――。

恋純 だいたい闇を抱えているんですよ(笑)。

 それが本作の作風です(笑)。

――ということは残るふたりも?

 ええ。主人公の双子の妹、折口美羽は普通っぽい子ですね。ユーザーさんに気に入ってもらえるようなヒロイン像を心がけて書かせてもらいました。摩庭祥子は、いつもぬいぐるみを抱えている姿からして、初見から「おや?」と思ってもらえるような不思議な少女です。

――シナリオに関しては、その4人のルートということでいいでしょうか?

 そうなのですが、実はあるヒロインルートだけは最後になります。3人のヒロインルートをクリアすると、最後にその子のルートで物語の全貌が判明する仕組みですね。そしてさらにグランドエンドもありまして……。 ――グランドエンドですか?

恋純 キャラクターの話として解決するエンディングも面白いですし、不思議な世界の解明、そんなエンディングも楽しんでもらえると思っています。シナリオ系を謳っていますので、その辺もじっくりと作品の世界を楽しんでもらえたらうれしいですね。

■『夏ノス』はCGのクオリティの高さも売り!

『夏の色のノスタルジア』/MOONSTON

――原画担当のやまかぜ嵐さんにお聞きしますが、今回はこだわったポイントがあったそうで。

やまかぜ嵐(以下、やまかぜ) はい、今回は立ち絵の塗りを変えてみました。最初は普通の立ち絵を描かせてもらったのですが、恋純から「これじゃ面白くない」と言われてしまいまして(笑)。そこで逆光をイメージした立ち絵を描かせてもらったのですが、完成を見てみたら、これまでとはまったく違う印象になりましたね。できあがりを見て自分では「いいな」と思ったんですが、そう感じているのは自分だけなんじゃないかという不安もありましたけれど(笑)。今までやってなかったものを作って、それを評価してもらうというのはやっぱり怖いですよね。

恋純 基本的にほかのメーカーさんは、こういう描き方をしていないと思います。ただ、今回は作風もシリアスなので、立ち絵から「心の闇」の部分も意識してもらえたらなと逆光でのチャレンジに踏み切ったんです。

やまかぜ ずっと同じことをやっていても先には進めないという気持ちもありましたし、いろいろなことができた方が楽しいですからね。

『夏の色のノスタルジア』/MOONSTON

――そんな中で、やまかぜさんオススメのシーンは?

やまかぜ 見てもらいたいシーンはたくさんあるのですが、全部が思い入れあって絞りきれないんです。 恋純 というのも、今回はやまかぜがほとんどのCGを監修していますからね。その分、クオリティの高さは保証できます。

――一般ユーザーが勘違いしそうな部分なのですが、実際は原画家がすべてのCGの監修を務めることは少ないんですよね。

恋純 原画はクレジットに載っている原画家がすべて描いているのですが、CGに関してはCG担当の者が描くという場合が普通なんですよ。なので、キャラクターデザインをした者が全部のCGを監修するということは少ないんです。ですが、やっぱり原画家が統括した方がイメージどおりの絵ができあがるので、今回はそういった手法を取り入れてみました。

――気になる絡み(エロ)シーンは?

『夏の色のノスタルジア』/MOONSTON『夏の色のノスタルジア』/MOONSTON

 制作者側の「義務的」な絡みではなく、「必然」の絡みというのを意識しています。

恋純 シナリオ重視というと、どうしても絡みシーンが薄くなりがちなのですが、『夏の色のノスタルジア』に関してはそこをうまく取り入れて、なおかつボリュームも意識して制作しました。

 プレイに関しては弊社でいうとCherryラインとは違って、あまりコアなものはなく、普通です(笑)。ただし今、恋純からあったように内容は厚いですよ。1キャラにつき10枚のCG、4人ですから合計CGは40枚になります。回想数でいうと5シーンは確実に用意させてもらいました。

――原画的な話としてはもうひとつ。今回は絵柄も少し変えてきましたよね?

やまかぜ 「これまでの絵柄だと特徴がないのでは?」という意見もありまして、今回は目の感じ、そのほかのディテールに変化を付けています。その分、顔を描くのには時間がかかりましたけど。

――いろいろなキャラクターを描き分けるコツもあるのでしょうか?

やまかぜ コツは、とにかく描くこと。描いている途中で最初と顔が変わってしまうこともあるので、そこは僕も注意しています(笑)。なのでCGに関しても、キャラクターの表情が崩れないように注意して監修しました。

■『夏ノス』は新たな挑戦が詰まった一作

――本作は、どういったファンにプレイしてもらいたいですか?

恋純 昔はシナリオゲーといわれる読ませる作品が多かったのですが、最近は少なくなってきています。そんな中で発表するシナリオ重視のタイトルなので、エロゲーファンはもちろんですが、ライトユーザーといわれるファン、それから美少女ゲームに触れたことのないファンにも楽しんでプレイしてもらえる作品を目指しているんです。広いファン層にプレイしてもらって「これ、ちょっと面白いんじゃない?」と言ってもらえたらうれしいですね。

――最近は萌えゲー抜きゲーに押される形のシナリオゲーですが、勇気がいる決断だったのでは?

恋純 どうなんでしょう? 毎回同じテイストの作品を作っても仕方ないと思っていますし、僕自身も新しいことをするのが好きなので、勇気がいるかと言われたら……(笑)。

――ちなみに特典は何を考えているのでしょう?

恋純 今考えているのが予約特典として原画集。絵にこだわらせていただいていますので、そこは楽しみにしてもらいたいなと。それからPSD画像を収めたディスクも特典として用意しました。

――PSD画像データディスクには、どのようなものが収録されるのでしょうか。

恋純 元データ的なものをつけられたらなと考えています。デジタルコンテンツに通じているユーザーさんが多いですので、容量の大きなCGを特典としてつけたいなと思っているんですよ。ただ、データが大きすぎて、たくさんは無理というジレンマもありますけれど。

――OP主題歌は、霜月はるかさんが歌われるそうですね。

恋純 こちらは、よくある美少女ゲームソングとは異なるオープニング曲ができました。今回はやはり世界観を重視した作品ということで、雰囲気があるというか「そう来たか!」と思ってもらえる、ゆったりとしたメロディ。まずはこのOPからゲームの世界に浸ってもらえればと思っています。ムービーをYouTubeで公開中ですので、ぜひ一度見てほしいです。

――今回は原画もシナリオも新しい挑戦が詰まった一本となりますが、それでいて古くからのMOONSTONEファンとしてうれしいシリアス作品といった感じでしょうか?

恋純 以前はシリアス路線もやっていましたので、昔から応援してくれているユーザーさんにも受け入れてもらえるかと思っています。それに、普段はあまりシリアス系の作品をプレイしないユーザーさんでもこの機会に挑戦してみてくださいということで。新しいといえば、我々は毎回、CGを動画的演出で見せていく手法を使っているのですが、今回は「人の感情を色で表現する」といった部分にチャレンジしていますので、そういったCGの見せ方にも注目してほしいですよね。この業界は進化していないようで微妙に進化しているんですよ(笑)。

『夏の色のノスタルジア』/MOONSTON

■気づいたら美少女ゲーム業界へ

――話は変わりますが、3人はなぜこの業界に入ることとなったのか、きっかけを教えていただければと思います。

恋純 僕はいろいろなところで言っているのですが、簡単に言うとなりゆきですかね(笑)。もともとCGをやりたかったのですが、たまたまアルバイトで入った会社が美少女ゲームを作っていて……と。そこから気がついたら社員になっていました。

――気がついたら社員になっていたというのはすごいですね。

恋純 昔は会社に泊まり込みなんてことも、しょっちゅうでしたからね。今では考えられないのですが、数えてみたら年間100日くらい泊まっていた。そんな日々が続いて、気がついたら……(笑)。

――呉さんはいかがでしょうか?

 僕は学生の頃から、文章にかかわる仕事をしたいと思っていました。美少女ゲームに関してはユーザーとして知っていたので、こういう業界もいいかなと選択肢のひとつとしてあったんです。というのも、僕の就職活動がちょうど2000年くらいで、そのころの業界では『Kanon』や『ONE』という作品がセンセーションを巻き起こしていましたからね。そういう流れもありまして「Circus(サーカス/D.C.シリーズなどで有名)」という会社に応募したら採用されまして、この業界に入ってきました。余談になりますが、もう一社合格していたのですが、そちらは現在開店休業状態。Cricusを選んだ理由が「先に返事が来た」というだけでしたから、今考えるとかなり際どい選択でしたね(笑)。

――最初に携わった作品は覚えていますか?

 少しだけですが『Aries』という作品のファンディスクでした。自分が書いた文章にボイスが乗ったのを聞いたときに「おー!」ってなりましたね。

――では、やまかぜさんはいかがでしょう?

やまかぜ 僕は高校生のころにゲーム業界で働きたいと思っていたのですが、それでも大学は出ていたいという考えもありまして、美術系の大学に進学したんです。でも実はその大学、いわゆる広告系の一般グラフィックデザインの学校だったんですよ。入ってからは「4年間ここで過ごしてしまうと、グラフィックデザインの業界に入ってしまう!」と焦りまして(笑)。そこでMOONSTONEに就職活動の一環として面接に来たのですが、運良く入社することができたという流れです。

――やっぱり描きたいのは女の子だったと。

やまかぜ そうです(笑)。

――今はpixivなどでイラストを披露している人もたくさんいて、中にはプロを目指している人もいるかと思うのですが、何かアドバイスはありますか?

やまかぜ プロとしては、どういった形でお金をもらうのかを考えてほしいですね。今は会社、フリー、イラストレーターの仕事も、いろいろな形、いろいろな手段があります。考え方は人それぞれですが、僕個人としてはフリーでやっていくのは厳しいかなと感じています。理由は……家だと作業が全然進まないので(笑)。

 僕も会社でしか原稿を書かないですね。

恋純 そういえばうちの会社の人間で、家で仕事をしている人や、仕事を持ち帰る人はほとんどいませんね。

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