【人物ルポルタージュ】29万票の金利~山田太郎と「表現の自由」の行方の画像1

「マンガ・アニメの表現の自由」をめぐる騒動は尽きない。おおよそ、この世に表現というものが生まれてからというもの、時の権力や世の良識と対峙するのは、あらゆる表現の宿命というもの。

 けれども、それは大衆が議論する政治的な課題とはなりにくい。先月行われた東京都議会選挙でも「表現の自由」を争点としようという試みはあった。「表現の自由」に関心のある候補者が当選、あるいは落選はした。けれども、豊洲への市場移転などのテーマに比べれば関心を持つ人が少なかったことは否めない。

 昨年「マンガ・アニメの表現の自由」を掲げて参院選に挑み、29万票超を獲得するも落選した山田太郎。この一人の人物を通して「マンガ・アニメの表現の自由」の実情を記していこう。


■刺激を欠いた。「表現の自由」を求めた都議選署名活動


 自動ドアが開き、一歩外へ踏み出す。そこは、夕方の目黒駅前のロータリーの雑踏。とたんに、長いため息が出た。

 まだ梅雨にも入らず、春とはいえず初夏ともいえない微妙な天気。夕方の曇り空は、やさぐれたため息を促して止まなかった。ロータリーの騒がしい靴音。バスの発車と停車の音。電車の走行音。すべてがうっとうしく感じられた。構わず背広の右ポケットをさぐって、煙草を一本取り出す。

 クールブーストの8ミリ。かれこれ10年以上慣れ親しんでいる紙巻きの特徴である、フィルターの部分に入っているメンソールの塊を指でプチっと潰して、行ったこともないラブホテルの名前が書いてあるライターで火をつける。吸い込む煙草の煙は、猟犬のような獣性を抑えようとする。

 二口、三口と吸えばギザギザに尖った心臓の表面は、少し穏やかになっていく。だが、腹の底からわき上がる、どうしようもない気持ちは治まる気配がなかった。

 ふと、視線を向けた先にサーティーワンの看板が見えた。半分ほどになった紙巻きをもみ消して、店に入る。

 長らく入ったこともないアイスクリーム屋は、非日常の空間。明るい店内、カラフルな模様。中年の我が身にとっては、一人でディズニーランドに入ったような場違いな感じ。でも、多少は気分が高揚して、ザラザラした魂を慰めてくれる。アイスクリームの並ぶショーケース。それは人間の魂の根源を揺さぶるワンダーランド。それをじいっと見て、今の自分を冷やしてくれそうなフレーバーを探す。

「今なら、こちらがお得ですよ~」

 若い女性店員が、明るい顔で示すのはトリプルサイズ。ああそうだ。ひとつやふたつ食べただけでは、とても気分は治まりそうにない。でも、3つならどうか。そんなに、食べれば違うかもしれない。

 じいっと、ショーケースを眺める。毒々しいような神々しいようなフレーバー。横文字で記された名前を見ても、いったいどれがどんな味なのだか、半分くらいは想像もつかない。だから、フレーバーの選び方は保守的になる。

「チョコレートミントと、ストロベリーチーズケーキと。あと、あれ……口の中がパチパチするやつをください」

 そんな注文も、店員は慣れた感じで対応してくれる。そうそう、口の中ではじけるヤツは、ホッピングシャワーという名前だった。

 ああそうだ。今、欲しいのは刺激だ。

 会計を終えて、席に座る。カップに入った白と青と、なんだかわからない彩りの丸いアイスクリーム。ピンクの小さなスプーンで、なるべく大きくすくって舌の上に転がす。まずは、チョコレートミントから。ミントの味はすうっと爽やかだけれども、何か物足りなかった。二口、三口と舌の上に乗せても変わらない。

 あ、最初からパチパチと弾けるやつにすればよかったんだよ……。スプーンで、ごっそりとすくって舌の上へ。でも、ホッピングシャワーも同じだった。舌の中でパチパチと弾ける音がする。

 その刺激は思っていたものと何かが違った。陰鬱な気分をすべて吹き飛ばしてくれるような刺激を期待していた。記憶の片隅にあるフレーバーは、舌の上で思い切り弾ける攻撃的な味だった。

 けれども、今、口の中にあるのは、子どものいたずらのような優しい刺激だった。恋人同士や家族連れならば楽しいであろうパチパチ弾ける音は、今の私を満足させることはなかったのだ。一口ごとに、甘い砂糖は満腹感だけを与えていた。

 それは、ランチの店選びをしくじった時に味わうような、寂々たる満腹感だった。

 時刻はすでに夕方6時頃。どこか刺激的な店にでもいこうか。iPhoneをズボンの左ポケットから取り出して、黒い画面を眺めてから、すぐにもとに戻した。次は新橋で人と会う約束をしていたのを思い出したからだ。

 店を出て、山手線に乗る。ドアが閉じて電車が走り出してから、内回りと外回りを間違っていたのに気づいた。まったく、気分を切り替えることはできなかった。

 深夜になり、事務所に帰ってからパソコンを開きICレコーダーに記録された録音をコピーした。テープ起こし用のソフトを起動して、ファイルをドラッグする「20170524山田太郎.MP3」と、ファイル名が表示される。テープ起こしは、単に文章を書くための作業ではない。

 取材の時には、聞き流していた言葉の中に、話の本質を見つけることもある。だから、取材して書くためには欠かせない作業である。レコーダーのマイク性能が進化した昨今では、相手の息づかいの変化や、立ち居振る舞いも音として、改めて確認することができる。いつもは、なるべく記憶の新しいうちに。多くの取材の場合には24時間以内に、その作業を完了させなくてはならないと自分に強いている。何よりも、かかる時間は短くても実際の取材時間+50%。明日にしようと寝てしまえば、途端に面倒くさい作業になってしまうものだ。

 そんなことはわかっているのに、いっこうにcommand+1のショートカットキーを押して再生をスタートする気にならなかった。一文字もテープ起こしをする気が起きなかったのだ。ふと、その日の取材のことを考えても、何も心を打つ言葉も、これは、すぐに聞き直して文字にして、本文の中で使わなければならないと心の躍る発言も思い出すことはできなかった。耳掃除をしたり、爪を切ったり、YouYubeで海外のポップスのPVを見ているうちに、ただただ時間だけが過ぎていく。

 パソコンのブラウザを開き、虚鵜の取材の発端となったサイトへアクセスする。

<Change.org>

 それは、数多の要求に彩られたインターネット署名サイト。

 その中に、目的のページはひとつ。

【都議選候補者殿】マンガ・アニメ・ゲームの自由を守ることと、コミケなどのビッグサイト会場問題の解決を都議選公約に入れて下さい!

 私は考えた。1,000か2,000文字程度の記事をさっさと書いて、お茶を濁せばよいのに。なぜ、私はそうしないのか、と。


■身内の裏切りにも腹は立たない


「腹なんか立たないですよ。だって、前に会社をやってた時には、株主たちから何度も難詰めされたことがありました。業績は上げているのにですよ。そんな理不尽を知っているから……」

 目黒駅前のロータリーに面したMG目黒駅前ビル。そのオフィス階には、いくつものベンチャー企業が入居している。その7階の一室が、現在の山田太郎の事務所である。ベンチャー企業向けのレンタルオフィスというのも様々である。中には、薄いパーティションで区切られただけの狭苦しい物件もある。でも、初めて足を踏み入れたそこは、存外に会社としての見てくれの整ったフロアであった。

 ふくよかに育った腹を抱えて泰然とソファに座る山田を前にして「腹が立たないんですか」と聞いた。

 私が山田が内心では腹を立てているのではないかと思ったのは、移ろいやすい支持者のことであった。

 見本のような名前が本名の男を、どの程度の人が知っているだろうか。山田は、二期目を目指した昨年の参院選で「落選して」取材が殺到した希有な人物である。比例区で29万票を超える個人名の得票を集めながらの落選。しかし、ネットを重視した選挙活動で大量得票に成功し、オタクの支持を集めたことで、注目を集めた。

 これまで、今は世田谷区長になった保坂展人をはじめオタクの好む「マンガやアニメの表現の自由を守る」ことを、公約として掲げる候補者はいた。けれども、オタクへのアピールが票に結びつく成果となったことはなかった。それを山田は覆したのだった。これは、誰も予想し得ない成果だった。

 何しろ、参院選を前に山田が立ち上げた「表現の自由を守る党」は、メールを送るだけで誰でもサポーターになることができたが、それでも3万人に達することはなかった。それ以前に、山田の秘書である坂井崇俊を中心に、山田を名誉顧問として立ち上げた「エンターテイメント表現の自由の会」も、コミックマーケットで同人誌を売ることを除けば、まったく存在感がなかったからだ。

 しかし、インタビューに赴いた今年5月。都議選を前に山田が始めた新たな活動は、見方によっては惨憺たる結果に終わろうとしていた。都議選候補者に対して「マンガ・アニメ・ゲームの表現の自由を守る」「オリンピック・パラリンピック時のビッグサイト会場問題の解決」を公約として掲げることを求めたネット署名。

 それは、築地市場の豊洲移転問題や、小池百合子都知事の政治に対する是否が争点となる中で、この問題はほとんど話題になっていなかった。

 署名を始める直前に、坂井は私にFacebookのメッセージで、この署名を取材をして記事にしてくれないかと打診をしてきた。この時から、私はなぜかしら、容易にはうまくいくことはないだろうという予感があった。

 山田の支持者……オタクたちに通底する移ろいやすさを、幾度も見ていたからである。

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