さすがに宮崎駿監督ならではの秀逸な飛空シーンの数々に対しては見劣りするところもあるが、そこは比べるのが酷というものだろう。

 そもそも、これまでの米林監督作品は少女を主人公にしながらも「動」よりも「静」の魅力に重心を傾けてきており、その点、宮崎監督が「静」を描こうとしても最終的にはダイナミック極まりない「動」へ行きついてしまうのと対照的なのだが、今回はあえて師匠である宮崎作品の世界観やらタッチなどを意識しながら取り組んでいった感もあり、しかしながら一方ではその中からあちこちに米林監督らしい繊細な心の動きなどの演出などがきちんとうかがえるのが頼もしい。

 興行的にも、まだ実績がないスタジオポノックの第1回作品として、東宝という国内最大の配給網の中で成功を収めないといけない使命感として、今回の題材は老若男女が接するファンタジーとしてまっとうすぎるくらいのものに成り得ており、これならば売る側も幅広い層に安心してアピールできることだろう。

 実際のところ、現在の国産アニメーション映画のクオリティはどんどん上がってきており、なかには昨年の『君の名は。』や『この世界の片隅に』のようにメジャー・シーンへ一気に躍り出る意欲作も増えてきているが、本作の場合、ジブリから巣立った者たちの新たなスタートとしての瑞々しさと、そのジブリで鍛えられてきた熟練の技術とが融合した心地よい作品として、他の追随を許さないものがある。

 まだまだスタジオジブリ神話は続きそうな気配ではあるのだが、いずれはそれを凌駕する作品も登場してくることだろう。それを成し得るのはスタジオポノックなのか、他のスタジオ&人材なのか、おもしろい時代になってきたものだなと思う。
(文・増當竜也)

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