――深夜にたくさんの視聴者を悶えさせてきた“恋テロ”アニメ>『月がきれい』(TOKYO MX)もついに最終回。地味アニメ好きのライター・大山くまおが全話レビュー中。フライングドッグ南健プロデューサーへのインタビューもあわせてどうぞ。*ここまでのレビュー

『月がきれい』12話 驚きの最終回。アニメならでは描き切った中学生のリアル、この作品こそが「きれい」の画像1
『月がきれい』公式サイトより


■恋愛の意志を描いたアニメ

 Aパートの主人公は、意外にも千夏(演:村川絵梨)だった。風に吹かれながら、思いきって小太郎(演:千葉翔也)に告白するときの正面からのカットに、千夏へのスタッフの愛情を感じる。

 しかし、千夏が告白したのは、小太郎が茜(演:小原好美)とキスをした思い出の氷川橋。それに飛び込んでいって顔を埋めた先には、茜の手編みのマフラーが。いわば、茜の結界に阻まれたような格好だった。フラれた千夏はさわやかにフレームアウトする。たぶん、同じ高校に行っても、話しかけたりしないんじゃないだろうか。

 Bパートでは、小太郎と茜の「別れ」が描かれる。茜は引っ越しのために千葉へ去ってしまう。「今までと変わらない」と強調する小太郎だが、茜の心は揺れ動く。小太郎が千夏に告白されたことも知っている。中3少女の心は飛び石のように不安定で、川面のようにゆらめく。

「小太郎くんに迷惑ばっかり……それが一番辛い……。どうしたらいいの……」

 涙を流し、嗚咽しながら茜は小太郎にキスをして走り去ってしまう。残された小太郎にはどうすることもできなかった。

 その後、ネットに投稿した小説がきっかけで茜が小太郎の本心に気づくという筋立ては、やや慌ただしかった感がある。そして引っ越し当日。電車に乗って川越を去る茜。茜のコメントに気づき、走りはじめる小太郎。

 LINEに頼らずに行動に移したのは、太宰治の「少くとも恋愛は、チャンスでないと思う。私はそれを、意志だと思う」という言葉を全うしたということだろう。恋愛は意志の力で成就するし、継続する。『月がきれい』はそんなわりと当たり前のことを当たり前に描いた作品だった。


■驚きと涙のエンディング

「好きな人が自分を好きになってくれるなんて」
「奇跡だと思った」

 小太郎と茜のモノローグから、「それから」とタイトルクレジットが出る。最終回のクライマックスはまさにここからだった。

 これまで11回にわたってエンディングで映し出されていた小太郎と茜のLINEの会話が時系列順に並び替えられ、さらにシチュエーションを表したイラストともに次々と現れたのだ。高校時代の他愛ない会話、実家でのデート、大学に進学した後のすれ違い、はじめての2人の旅行、就職、結婚前夜――。

 ラストカットは川越まつりで両家の両親に囲まれた小太郎と茜の姿だった。茜は2人の赤ちゃんを抱いている。3人が指にしている赤い水引は、川越氷川神社の「結い紐」だ。

「縁結びの神さま」として知られる川越氷川神社のウェブサイトによると、人と人がただ出会うだけでなく、そのめぐりあいから「新しい何か」が生まれることを「むすび」というらしい。同じクラスになり、一瞬のふれあいと直感から意志によって恋愛を紡いできた2人は、それだけで常に何かを生み出してきたということになる。

 LINEの会話が小太郎と茜のものだとわからなかった人にとっては、驚きの仕掛けだったと思うし、2人のものだと確信していた人にとっても、意外性あふれる感動的なエンディングだった。なんでだか泣けてきちゃうよね、あのラスト。

『月がきれい』12話 驚きの最終回。アニメならでは描き切った中学生のリアル、この作品こそが「きれい」のページです。おたぽるは、アニメ作品レビュー17年4月期アニメフライングドッグ千葉翔也南健夏目漱石大山くまお太宰治宮沢賢治小原好美岸誠二川越月がきれいの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

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