■「神戸アニメストリート」自体がパクリから生まれた?

「最初に岸と会ったのは、14年の夏です。アポイントもなく“神戸アニメストリートというのをつくるのでアドバイスが欲しい”やってきたのです」

 そう話すのは、「阿佐ヶ谷アニメストリート」を運営する株式会社作戦本部の鴨志田由貴氏だ。

 アポなしの上に、渋谷かおりという女性を同伴していたと鴨志田は語る。この渋谷という女性、各所で岸氏が常に同伴していたと証言される人物。岸氏が運営する店舗でDJなどをしているようだが、前述の「創作工房」中村氏が支払いを催促するため電話した際に「電話かけてきて迷惑だ」と凄んで電話をたたき切った相手と同一人物の様子。岸氏とは何か特別な関係にあるグル・共犯者のようである。

 さて、アポなしでの訪問のため「何かあれば協力します」程度の返事しかしなかった鴨志田氏。ところが、その後岸は「15年3月までにオープンして予算を消化しなくてはならない。イベントなどで販売するグッズが欲しい」と依頼してきたという。

 このときは、きちんと支払いはなされたそうだが、鴨志田氏が疑問を感じたのはオープンのとき。何も打診がないままに「神戸アニメストリート」という名前を掲げ、オープン日も前年の「阿佐ヶ谷アニメストリート」と同じ3月29日に設定されていたのである。ただ、このときはまだ「たまたまかもしれない」程度に考えていた。しかし、実際の運営には疑問ばかりが浮かんだという。

「収益があがりそうな施設が、カフェのほかはレンタルボックスとニコ生などができるスタジオだけ。それでやっていけるのかな……と思いまして。そうしていたら“レンタルボックス”に置く品物がないとか、スタッフがいないなどと、新たな依頼をしてきたのです」(鴨志田氏)

 そこで、鴨志田氏は自分の会社の在庫を販売。また、信頼の置ける人物を紹介しスタッフとして神戸に行ってもらった。

 しかし、送付したグッズの代金はいまだ支払われてはいない。加えて、岸氏はスタッフに対し、日常的に暴言を繰り返し、給料もろくに支払わなかったのである。それを知った鴨志田氏は、慌てて連れ戻したという。

 岸氏の行動は、想像の斜め上をいくものばかりだ。取材で出会った関係者からは、こんな証言もあった。

「最初のロゴがアーティストの村上隆さんの作品と類似していると問題になったことがありました。そのときにも岸氏は村上さんの事務所に対して“取り替えてやるから700万円を払え”と要求していることを、自慢げに語っていました。過去に逮捕されたことだって、飲み会の席で武勇伝のように何度も語っていましたよ」


■「次は大分県を寄生先に」と狙う岸氏の暗躍

 いったい、神戸市はなぜ岸氏のような人物が寄生する隙を見せてしまったのか。現在、神戸市では、これ以外にも「第2の森友」ともいえるような補助金の不明朗な支出が問題となっている。この問題を追及している樫野孝人兵庫県議会議員は、「神戸アニメストリート」の問題の背景を次のように語る。

「あそこは震災復興事業の中でも、空いたままになっていて、とにかく何かを埋めなくてならないと神戸市が考えていた場所です。そんなところだから、甘い審査でいい加減な業者が参入してしまったのでしょう」

 では、岸氏に得体の知れないバックがついていることはないのか?

「それはありませんよ」

 なるほど、確かにそれなりの背景があれば、「小銭」の踏み倒しなどではなく、もっと巧妙な手段を使うだろう。

 現在、踏み倒した先に幾ばくかの支払いをして、黙らせようと懸命な岸氏。その岸氏が、すでに次の寄生先を見つけていることも、取材の中で明らかになってきた。あるアニメグッズなどを制作する会社に、岸氏はこんな話を持ちかけいていたのだ。

「来年、大分県の主催で大分国民文化祭という催しがあります。ここで岸氏は“予算は25億ある。ガイナックスのコンテンツはなんでも使っていいよ”と事業を持ちかけてきたんですよ」

 国民文化祭は、各都道府県の持ち回りで行われている国体の文化祭版。確かに、来年は大分県で開催予定。また、すでにキックオフイベントという形でさまざまな催しが行われており、その中で、昨年には「おおいたクールジャパン」というタイトルで、コスプレや痛車展示のイベントが行われている。このイベントにも、岸氏は参画していたのだろうか。さっそく、このイベントの主催者に話を聞いてみたところ、驚いた様子だった。

「そんな人は、関わっていませんが……」

 この人物によれば、15年に開催した「大痛エキスポ」という催しで「神戸アニメストリート」に仕事を依頼したことはあった。しかし、国民文化祭の関連イベントには、岸氏はまったく関わっていないという。

「予算25億円って……先日、県の予算が決まりましたけれど、全体で10億円ちょっとですよ」(同)

 すでに、一連のネットでの騒ぎも知っており「今後、関係することがあれば考えなくてはならない」というのだった。

「神戸アニメストリート」のみならず、GAINAX WESTの取締役を名乗る岸氏。さらに、ヴォイス神戸という会社のほか「一般社団法人関西痛車協会」の理事なる名刺も配布している。この協会に至っては、法人登記すら見当たらない。

 もはや、多くの関係者の証言によって、それらのすべてが明らかになろうとしているからだろうか。冒頭に記したように、筆者の取材に対して、ただ一言を述べて電話を切ることしかできなかった。

 こうして明らかになっているのは、ただ一個人の悪行ではない。マンガやアニメコンテンツを用いた町おこしや活性化という事業が安易に実施され、そこに補助金を狙うハゲタカが群がっているという現実である。

 一部の被害者に踏み倒したカネが振り込まれているとはいえ、いまだ岸氏が運営する「神戸アニメストリート」は存在している。引き続き、取材を続けて行くことにしたい。
(文=昼間たかし)

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