あのドラゴンたちの元ネタは……!? 知って差が出る『小林さんちのメイドラゴン』から学ぶファンタジー知識(後編)の画像1
 TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』公式サイトより。

 さて先週に続いて(記事参照)、『小林さんちのメイドラゴン』(作:クール教信者、双葉社/ABC朝日放送ほか)にまだまだ詰め込まれているドラゴン要素をお伝えしていこうと思います。知っておいて損はないファンタジーの豆知識で、アニメをさらに楽しんで下さい。

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Wikimedia Commonsより。トッケイヤモリの目。撮影:(c) 1998 Richard Ling/GFDL

 前回、ドラゴン種族の特徴として書き忘れた点があります。トールのそれが一番わかりやすいのですが、登場するドラゴンキャラクター全員の目には縦の線「爬虫類の目」がきちんと描き込まれています。人間のキャラクターに見られないこの特徴は「ドラゴンが爬虫類をベースとして想像された生き物」ということを示すものです。

 二次創作でイラストなどを描かれる場合、このポイントを抑えておけば、ちょっとだけ差が付くかもしれませんね。

 今回の後編では、ナイスバディで陽気なお姉さんキャラのルコア、トールのライバル(?)で生真面目なエルマ、そしてアニメにはまだ登場していないトールのお父さんについて考察、解説していきます。

■ルコア(元ネタ:南米の神話)

 第6話「お宅訪問!(していないお宅もあります)でも、ほんの少し語られていましたが、ルコアの元ネタは、南米のメキシコ周辺にかつて存在した「トルテカ帝国」「アステカ帝国」などで、広く篤く崇拝されていた神様「ケツァルコアトル」です。名前には「鳥ヘビ(翼の生えたヘビ)」という意味があり、またもや残念ながら原典では男神です。竜の分類としてはOPで一瞬披露している通り、ヘビの胴体から2本の手が生え、翼となっている飛竜の姿となります。

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Wikimedia Commonsより。ケツァルコアトルの頭の彫像。撮影:Marcelosan

 南米では非常に古い時代から信仰されていた神様で、少なくとも7世紀ごろには存在が確認されています。古くから信仰を集める、さらに人気のある神様であったため、各地で様々な属性が追加され、結果として書き出せばきりがないほどに広い分野を司る存在となってしまいました。

 生贄として人間を殺し、神に捧げていたことで知られるアステカ文明ですが、ケツァルコアトルはそれら神々の中で唯一「人身御供による生贄を拒否した」という、平和的な神様です。

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TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』公式サイトより
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 ですが、人身御供を拒否したことを他の血なまぐさい生贄を好む神々に疎まれてしまいます。そして「罠として用意されていた、呪いのかかったお酒(プルケ)を飲んでしまい、その勢いで実の妹・ケツァルペトラトルと肉体関係を結んだ」ことを咎められ、アステカを追い出されるのです。この点はTVアニメ公式サイトのキャラクター紹介ページでも、トールが言及していますね。

 これらケツァルコアトルの神やドラゴンとしての特性と、アニメでのルコアの設定をまとめてみましょう。史実の要素をよく取り込んでいることがおわかり頂けるかと思います。
・「非常に古い神」=「はるか昔から人間の世界に住んでいる」
・「南米生まれ」=「リオのカーニバルなど南米のステレオタイプとなる、開放的なファッションと明るい性格」
・「信仰が篤すぎたため、あまりにも多くの概念を守る存在となった。人間の生贄を拒否した優しい性格」=「面倒見の良い優しいお姉さん」
・「アステカを追い出された上、帰るべき国が滅亡している」=「放浪の世捨て人、元神様」


■アステカを滅ぼしたケツァルコアトル

 実はケツァルコアトルという神は、その信仰と予言が、アステカ文明滅亡の一因となっています。

 伝承におけるケツァルコアトルは人間にも変化でき、その際には「色白で背が高く、目は大きく、眉毛は太く、美しい口ひげをたくわえた男性」の姿になります。またアステカには「追い出されたケツァルコアトルは、一の葦の年(西暦1519年にあたる)に帰ってくる」という予言が残されていました。

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Wikimedia Commonsより。エルナン・コルテスの肖像画

 そして時は流れて大航海時代のこと。スペインからアステカへ、船でやってきた一団がありました。この一団のリーダーであった「エルナン・コルテス」という男の外見は、たまたま「色白で背が高く、目が大きく、眉は太く、口ひげをたくわえている」という、先述したケツァルコアトルが人間の姿をしている時の特徴とほぼ一致していました。

 さらにその年は偶然にも、ケツァルコアトルが帰ってくるという約束の日、1519年であったのです。嫌な予感しかしませんね。

 そうなんです。未開の地から富を奪おうとやってきたスペイン人たちを見て、アステカの人々は「予言通り、ケツァルコアトル様とその御一行が帰ってきたぞ」と、招かれざる客の来訪に大喜び。コルテス一行を手厚くもてなし、さらに様々な特権を与えてしまったのです。

 双方の蜜月は一瞬で終わり、その後スペインとアステカ国との間で戦争がはじまりましたが、スペインはわずか2年でアステカを完全に征服しました。そしてアステカ文明とその文化は徹底した略奪と破壊によって完全に失われ、滅亡したのです。

 偶然にしてはあまりにもできすぎているエピソードだとは思いませんか?

 ルコアの「どちらの勢力にもつかず傍観している」「世の中を俯瞰しつつ、双方の世界のバランスを保てるように配慮して生きてきた」という設定は、このエピソードに影響を受けているものなのかもしれません。

■エルマ(元ネタ:旧約聖書、中国伝承、他複数?)

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TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』公式サイトより。

 エルマの元ネタは、複数の存在を組み合わせたものかと思われます。

 ひとまずアニメOPで見られる、ドラゴン形態時の外見は旧約聖書の水棲竜「レヴィアタン(レビヤタン、リヴァイアサンとも)」か、あるいは東洋の龍です。ただし一本角、日本の着物のような衣装、性格などの元ネタはそこにつながるものではありません。

 着物をアレンジしたような衣装は、古い時代のチャイナドレスを着崩したようにも見えます。また、性格は真面目で人間寄りという「東洋の龍」に近いものです。そして一本の角が特徴の、ドラゴンに近い神話的存在と言えば……?

 といった具合でさまざまな可能性を鑑みた考察の結果、正確にはドラゴンではないのですが、そのような扱いを受けることがある、日本でも馴染み深い、一本角を特徴とする中国の聖獣「麒麟(きりん)」に辿りつきました。

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Wikimedia Commonsより。ドラゴンとして描かれたレヴィアタン

 まずは「レヴィアタン」から解説していきましょう。レヴィアタンはユダヤ教及びキリスト教の正典「旧約聖書」に登場する、海に棲む巨大な怪物です。

 原典内においては「全身が硬いウロコに隙間なく覆われている海の獣」などの、ワニに近い爬虫類的な特徴が述べられているに留まっています。ただし「鼻からは煙を、口からは炎を吐く」という記述から、ドラゴンとして扱われることが多い存在です。

 レヴィアタンは神が天地創造の最中に作り出した怪物であり、世界全体を覆い包めるほどに大きい身体と、とても強い力を持っています。ちっぽけな人間には殺すことも手懐けることも叶わない、と神が太鼓判を押す世界最強の存在で、ドラゴンとして扱うならば間違いなく最強のドラゴンと言えるでしょう。

 エルマの高い戦闘力と魔力、そして「奇跡を起こす聖海の巫女」として信仰の対象となり宗教を作った、というのは、これらレヴィアタンの由来となった「原典」と、その中での逸話が由来でしょう。

 ただし、レヴィアタンは「驕り高ぶるものすべてを見下し、誇り高い獣すべての上に君臨している」存在であり、これはエルマのキャラクター性に当てはまりません。

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Wikimedia Commonsより。麒麟の像

 次に、エルマの構成要素のひとつであろう「麒麟(きりん)」について解説していきます。麒麟は中国に伝わる霊獣で、時の皇帝が良い政治を行っていると姿を現す聖なる獣「瑞獣(ずいじゅう)」です。

 正確にはドラゴンではない、と先述した通り、麒麟の伝統的な外見は「鹿のような身体、4本足はヒヅメのある馬のもの、お尻からは牛の尻尾、背中の毛が五色に輝き、頭部は丸く、額から肉に包まれた1本の角が生えている」という、ドラゴンとは全く異なるものです。

 ただし、近年に描かれている麒麟の絵の殆どは「東洋の龍のような頭部、ウロコに覆われた身体、全身に炎をまとっている」という、先述の特徴にドラゴン的な特徴が付け加えられたものとなっています。身近なところでは、日本の飲料メーカー「キリンビール株式会社」のブランド「キリンビール」のラベルに描かれている麒麟がそれです。

 おそらく「正確にはドラゴンではないが、近年ではドラゴン的に扱われることが多い」という点から、麒麟がエルマというキャラのドラゴン要素として採用されたのではないでしょうか。

 そして麒麟の性格なのですが、聖なる獣として扱われている通り、品行方正をそのまま生き物にしたような感じ。極めて慈悲深く、過剰なほどに几帳面で、あまりにも真面目がすぎる数々の設定は、ある中国文学者をして「麒麟は概念から出た、規範的な、白けてしまうほどにお上品すぎる、退屈極まりない生き物」と、著書内で揶揄されてしまうほど。

 このように、麒麟はエルマの実直で厳格、融通が効かない真面目な性格、そして人間との調和を求める調和勢に属している、という設定の由来を求めるに足る存在なのです。他キャラクターには見られない和風の衣装も、中国由来ながら日本でも馴染み深い存在であるため、と捉えれば不自然さはないでしょう。

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Wikimedia Commonsより。手に三叉槍を持つ半魚半人の姿で描かれた、ギリシャ神話の海神プロテウス

 ドラゴン要素ではない余談となりますが、エルマが手に持つ三つ又の槍「三叉槍(さんさそう)」は、水棲の亜人種が持つ武器として一般的なものです。また、ギリシャ神話の海神ポセイドンの武器「トリアイナ(英語読みでトライデント)」にも由来が求められるでしょう。

■トール父(元ネタ:不明)

 最後に軽く、トールのお父さんについても触れたいと思いますが、そもそもアニメに登場していていませんし、原作マンガでも出番が少ないため、状況証拠などからの考察……要するに当てずっぽうです、すみません。

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Wikimedia Commonsより。トールに釣り上げられたヨルムンガンド。若干ながらドラゴンの意匠が見られる

 トールのお父さんについては、娘のトールという名前が北欧神話の戦神トールと同名であることや「終焉帝」という呼ばれ方から、北欧神話における最終戦争「ラグナロク」において、トールと戦い相打ちとなる運命が定められた巨大ヘビ「ヨルムンガンド」をモチーフとしている可能性が考えられます(トール自身は作中で同名の北欧神話最強の戦神、トールではないと明言していますが)。

 ですが、トールのお父さんが人間に妥協的な「調和勢」であることは、神々の敗北と世界の破滅が約束されている「ラグナロク」において、敵側として登場するヨルムンガンドがモチーフとしてはふさわしくありません。

 ただ、トールのお父さんが「ヨルムンガンドと戦神トールを組み合わせた存在」という可能性はなきにしもあらず、といった所でしょうか。

――さて、前編後編と長くなってしまいましたが、以上が『小林さんちのメイドラゴン』に登場する、ほぼ全種類のドラゴンについての考察となります。

 前編と併せて、これら元ネタと設定を踏まえておけば、エピソードの元ネタやキャラクターに対する深い考察、展開の予想が容易になると思います。これらドラゴンの知識を、アニメもマンガもまだまだ続く『小林さんちのメイドラゴン』や、ドラゴンの登場する作品をさらに楽しむエッセンスとして頂ければ幸いです。

■文・たけしな竜美
 オタク系サブカルチャー、心霊、廃墟、都市伝説、オカルト、神話伝承・史実、スマホアプリなど、雑多なジャンルで記事執筆、映像出演、漫画原作をしています。お仕事募集中です!
Twitter:https://twitter.com/t23_tksn

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