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『やおろちの巫女さん(1)』(講談社)

 ほんわかした作品かなと思って読み始めたら、実は泣きの作品でした。

 武月陸『やおろちの巫女さん』(講談社)は、表紙のイメージに反してハードコアな物語です。

 ヒロイン・ユキちゃんは女学生にして巫女。彼女は邪神「八岐大蛇(やおろち)」を召喚することができる女の子です。

 もとはといえば、千年前に世界を滅ぼそうとした怪物と、その王と戦うために一人の巫女が「八岐大蛇(やおろち)」の力を用いたのが始まり。以来、その子孫は命を捧げる代償に怪物を倒す術を手に入れているのです。

 この千年の間、巫女は王の心臓を封印した勾玉を持ち、それを奪い王を復活させようとする怪物と戦い続けてきました。

 しかし、常に巫女の持つ「八岐大蛇(やおろち)」の力は圧倒的。毎朝、ユキちゃんが登校する途中に、必ず怪物たちは襲ってきますが、勝負になりません。もはや、戦いは毎朝の日課ですし、町の人々も怪物を恐れることもありません。それどころか、フツーに親切にしています。

 怪物のほうも、王の心臓を取り返さなくてはならない使命を忘れてはいませんが、ユキちゃんとは半ば友達のようなものです。何しろ、いったん、心臓を奪い返したとしても、巨大すぎて別に封印されている王の身体のところまで運ぶのは困難。そうこうしているうちに、ユキちゃんに逆襲されるのがオチなのです。

 しかも、ユキちゃんは可哀想な宿命を持っています。「八岐大蛇(やおろち)」の力を使える代償として、まだ少女なのに髪の毛は真っ白。目の下はクマだらけ。力を制御するために祝詞を書いた包帯で身体はグルグル巻きなのです。そして、身体は少しずつ蝕まれています。ユキちゃんの母親も、身体を蝕まれて若くして亡くなったことが作中では描写されます。

 長命な怪物たちは、代々の巫女と同じように戦い、いつしか家族のような関係になっています。長命な怪物たちにとって、人間は仲良くなってもすぐに死んでしまう存在。そこに無常を感じながらも怪物は、使命を忘れることもできずに葛藤を続けているのです。

 もう誰もが「なんで戦っているんだろう」と疑問を覚えながらも止めることができないという世界。ひとつひとつのエピソードは、ほんわかとしていますが、実はものすごく悲しいのです。

 さらに泣けるのが、作者の後書き。

 作者の武月氏はマンガを止めようと思っていたところに、この作品の担当に声をかけられたそうです。

 作者がある種の悲しみを知っているからこそ描けた作品というべきか。とにかく、ユキちゃんが可哀想で可愛いという理由で続きを読みたいと思いました。
(文=大居候)

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