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『「表現の自由」入門』(岩波書店)

 そもそも「表現の自由」ってなんなのか。これまで、筆者も「表現の自由」がテーマとなるさまざまな問題を取材し、著書も執筆してみた。でも「表現の自由」がなんなのかは、よくわからない。

 この記事を読んでいる人すべての考える「表現の自由」が一致することはない。だから「『表現の自由』を守ろう」というお題目は、ものすごく扱いづらい。

 そんなしちめんどくさい「表現の自由」という問題を、ナイジェル・ウォーバートン『「表現の自由」入門』(岩波書店)は、解きほぐしてくれる。本書の原書は2009年にオックスフォード大学の「Very Short Introduction」シリーズの一冊として刊行されたもの。ゆえに「表現の自由」を、こういうものであると断定するのではなく、さまざまな視点から、基礎を教えようという意志で記述されている。

 本書では、冒頭に表現の自由の根本原理として2つの資料を示す。合衆国憲法第一修正と国連人権宣言(世界人権宣言)第19条である。そのまま引用してみよう。

 合衆国議会は……言論・出版の自由もしくは人民が平和的に集会し、不満の解消を求めて政府に請願する権利を奪う法律を制定してはならない。
(合衆国憲法第一修正)

 すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を含む。
(世界人権宣言第19条)

 本書では、これを金科玉条とするのではなく、この2つの条文が、蓋然性のある基本原理であるとした上で「表現の自由」の価値と課せられるべき制限について、さまざまな論点を示していく。

 本書の中では言論と表現の自由は一体とのものとして記述されていくわけだが、その中で著者は、その擁護者たちはなんらかの制限の必要性を認識していることを記し「自由は放縦は混同されるべきではない」とする。

 ここで著者は、それが完全な自由な状態であれば、誹謗中傷や児童ポルノ、国家機密の漏洩を許容することになると指摘する。そして「望むに値する言論の自由の種類とは、あなたの見解を適当な時に適当な場所で表明する自由であり、自分に都合のよい時にいつでも発言する自由ではない」と釘を刺す。

 その上で、本書では巨大な「表現の自由」は、いかなる場合にいかなる制限を受けるべきかについて、これまで行われてきた膨大な議論をコンパクトにまとめていく。

「表現の自由」入門

「表現の自由」入門

「表現の自由」とは何か……?

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