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『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』公式サイトより。

 1980年に第1作『映画ドラえもん のび太の恐竜』を発表してから、早36年。『映画ドラえもん』は日本映画界が誇るべき長寿シリーズとして、もっともっと語られるべき存在だとも思うが、それはさておき、このたび第36作目としてお披露目される『映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生』は、89年に公開された第10作目『映画ドラえもん のび太の日本誕生』のリメイクとなる。

 お話は、それぞれの理由で家出を決心したのび太たちが、タイムマシンで7万年前の日本列島に赴き、やがて時空乱流に取り込まれて現代にやってきた原始人少年ククルの家族らを助けるため、古代中国大陸へ乗り込んでいく……というものだが、これが実に素直なで秀逸なリメイク作品となっており、オリジナルと比較しても見劣りしないどころか、21世紀の今ならではの画と音に裏打ちされた丁寧な作業には感服するばかりだが、これは2006年にスタッフ&キャストを一新した第26作『映画ドラえもん のび太の恐竜2006』以降、どのリメイク作品にも顕著な特徴でもある。

 ちょっと興味が出てきたので、89年オリジナル版も久々に見直してみたが、やはり16年版には過剰なアレンジは見当たらず、一方で作画を含む四半世紀以上のアニメーション技術の躍進などを体感させられる。上映時間も104分と、オリジナル版100分より長くなっているものの、だからといって冗長な感は皆無で、そこにも昭和と平成の、映画における映画の時間感覚の相違を感じさせられる。

 特にオリジナル版における芝山努監督ら手練れのスタッフ陣による省略の利いた粋の良さや、やんちゃな風情は今の時代に欠けているものかもしれないが、代わりに16年版のスタッフの意気込みからは、先達に対する敬意と共に、それをいかに今の時代に見合った空気感を取り込みながら描出するかに腐心しているさまが感じられるのだ。

 現在の『映画ドラえもん』リメイク路線には、どこかしら『宇宙戦艦ヤマト』とそのリメイク『宇宙戦艦ヤマト2199』の関係性に似たものが感じられてならない。即ち、オリジナルを見て育ち、リスペクトする世代が、いかに丁寧に、そして現代的に再生させるか腐心しているか、またそれ自体が私などのようなオリジナルを見て育った世代にとって非常に面白く思えるのである。

 今回ハッとさせられたのは、オリジナル版と16年版、どちらも後半の舞台は7万年前の、日本と地続きだった時期の中国大陸なのだが、オリジナル版が公開された89年は、まだ日本と中国の関係が良好な時代であった(ちなみに第2次天安門事件が起きるのは、1989年6月4日。オリジナル版が公開された3月11日から、およそ3カ月後のことである)。

 中国との関係が緊迫している今の時代、この作品が装いも新たに世に出て、子どもたちに差別や偏見のない友情世界を訴えることは望ましいことのように思える。

 一方、オリジナル版を見たときはさほど気にしていなかったのだが、16年版でも“ゾンビ”なる言葉が出てくる。そういえば80年代の後半、ゾンビは単に人を喰らう死人の意味だけではなく、もっとシャーマニズムに根差した存在としての文化人類学的要素も大いにあった。死者を蘇らせるというブードゥー教の秘術の正体を探る異色ホラー映画『ゾンビ伝説』が製作され、日本公開されたのが88年。藤子・F・不二雄はちゃんと研究した上で“ドラゾンビ”“ギガゾンビ”なる言葉を用いているのだなと、これまた改めて唸らされた次第だが、オリジナルを知らぬまま16年版に接する観客の中には、ドラゾンビと聞いて「ドラえもんがゾンビになったのか⁉」と勘違いしてしまう人もいるかもしれない。

 思えばスタッフ&キャストを一新した『のび太の恐竜2006』および新TVシリーズがお披露目されたころは、それまでのものに慣れ親しんだ向きからの反発が強く感じられたものだが、およそ10年の時を経て、このリニューアルは世代交代しつつ先達の名誉を継承するものとして成功していると思う。さすがに今のドラえもん役=水田わさびの声は、先代・大山のぶ代の作りこみながらも明晰な声質に比べると、ひみつ道具を叫ぶときや興奮したときなどの台詞を吐くときに滑舌の悪さを若干感じたりもするが、それ以外は健闘していると思う(個人的にはのび太のママの声を三石琴乃が担当していることに、時代の流れを痛感させられるのだが、これがまたすごくいい。今回もさりげなくおいしいところを担っています)。

 しかし、だからこそ、もうリメイクはそろそろ打ち止めにしてもいいのではないかとも思う。今回の監督・八鍬新之助は第34作『映画ドラえもん 新・のび太の大魔境~ペコと5人の探検隊~』(14)も手掛けているが、そちらも『映画ドラえもん のび太の大魔境』(82)のリメイクである。

 原作者が亡くなってすでに久しい昨今ではあるが、そのスピリットを今の映画スタッフがちゃんと受け継いでいることは、この10年できちんと証明されたのだから、これからはオリジナル・ストーリーで勝負させるべきだと思うのだが、いかがなものだろう(その伝で申せば、『映画クレヨンしんちゃん』シリーズが原作者亡き後も毎回オリジナルで頑張っているのは好例といえよう)。

 シリーズがリニューアルして11年、そのうちリメイク作品6本、オリジナル作品5本。この後どういう展開を示していくか、興味津々ではある。
文/増當竜也

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