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『漫画アシスタントの日常』
(大塚志郎/竹書房)

 ライターとして仕事をしていると、マンガ家がうらやましく感じる時があります。ライターの仕事はパソコンが一台あれば成立します。ですから、仕事中は一人で黙々とパソコンに向かっているだけ。対して、マンガ家はアシスタントさんがいたりして集団作業だから、楽しそうじゃないですか。

 でも、大塚志郎『漫画アシスタントの日常』(竹書房)は、それが隣の芝生が青く見えているだけだと教えてくれました。帯に「漫画界のタブー!?」と煽りを記す、この作品。タブーとかいって、ちょっと辛口なことを描いているだけだろう……そう思って読んでいたら、完全に舐めていました。ごめんなさい。

 さすがは出版界のアウトサイダー(業界団体に入ってない)である竹書房の作品です。

 この作品、フリーのアシスタントで糊口をしのぐ駆け出し漫画家の五百住志歩を狂言回しに、数々の修羅場と処世術のうんちくを記していきます。

 こう記すと、漫画ならではの話を盛っている感がありそうです。でも、この作品にはウソがありません。現場を知らない人でも「やっぱりそうなのか」と納得してしまうリアルさがあります。

「修羅場では、許容範囲であれば作風が違ってもスピード重視」
「修羅場でやみくもなリテイクをして手を止めてはいけない」
「メインキャラの作画・ペン入れはアシスタントが断ってよい数少ない仕事のひとつ」

 だいたい2ページにひとつは、うんちくが出てきます。

「初めてアシスタントに入ると漫画家は、一時間弱でできる仕事で実力をみるので最初の一時間が勝負」とか、実際に漫画家を目指して励んでいる人も役に立ちそうです。一方で、「漫画家はどんなことがあってもアシスタントに手を出しては(殴っては)いけない」とか、人として当たり前だろうという教訓も。

 実際、修羅場になると物を投げつけてくる程度の暴力は、よく耳にする話です。でも、そうした漫画家はだいたい作品が荒くなって消えていきます。自分のメンタルもコントロールできないような人は、漫画家には向かないということでしょう。

 アシスタントの立場からも漫画家の立場からも、自らの行いを反省するのに役立ちそうな、この作品。もっとも役立つのは、後書きのオマケ漫画です。ここで作者は「漫画の連載をすることは起業して会社を興すのと同じ。すなわち“社長”になることだ」と言い切ります。その上で「舵取りをミスるとつぶれる」とまで。

 ここでは「週刊連載だと毎月80万円くらい原稿料が入るが出ていくお金も多い」として身の丈に合わないアパートを借りたり、やりくりをミスると大変なことになるという教訓を教えてくれます。さらに確定申告をしないと収入=年商になるから、すごい税金を払うハメになるということまで……。

 これまで、漫画家やアシスタントを描いた「漫画家マンガ」は幾つかありましたが、アシスタントを使う漫画家=社長とまで露骨に言い切る本作品は、一種のドキュメンタリーと見ることもできます。結局、プロになるということは自分の好きなことを好きなようにできるのとイコールじゃないということを教えてくれる作品です。
(文=大居候)

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