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映画『心が叫びたがってるんだ。』より


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 思春期の少年少女たちにとって、世界は学校と家庭しかない。狭い脆弱な世界では、非科学的なタブーが生じやすい。迷信、噂、誤った刷り込みによって人格形成に重要な成長期が左右されてしまう。劇場アニメ『心が叫びたがってるんだ。』のヒロイン・成瀬順は幼い頃に自分が体験したトラウマから自分自身に呪いを掛けてしまう。口は災いのもと。自分が口を開けば、誰かを傷つけてしまう。だから自分は誰ともしゃべっちゃいけないんだと。感受性豊かで、純真な子どもほど暗示に掛かりやすい。埼玉県秩父ののどかなロケーションを背景に、自分自身に掛けた呪いという名のバリアーの中に閉じ篭ってきた少女が、他者と関わることで成長し、呪縛から解き放たれようとする姿を『ここさけ』は繊細に描いていく。

 劇場アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』(13)を大ロングランヒットさせた脚本・岡田麿里、監督・長井龍雪、キャラクターデザイン・田中将賀の3人が再結集した『ここさけ』。子どもの頃に亡くなった幼なじみに対する罪悪感が『あの花』の重要なモチーフとなっていたように、『ここさけ』でも罪の意識がやはり物語の核となっている。『ここさけ』のヒロイン・順(水瀬いのり)は幼い頃は明るくおしゃべりな女の子だった。ある日、丘の上にある洋風のお城(実はラブホテル)からお父さんと知らない若い女性が一緒に出てくるのを目撃し、そのことを興奮気味にお母さん(吉田羊)に報告した。順のおしゃべりが原因となり、両親は離婚。それ以来、順は自己暗示を掛け、人と話すとお腹が痛くなるようになってしまう。自分に重い罰を与えることで、母親と2人っきりになってしまった小さな世界で辛うじて生きながらえてきた。

“コミュニケーション障害”を抱えた順は、高校生になっても友達がいない。学校でひと言もしゃべらない暗い青春を送っていたが、高校2年の秋に担任教師(藤原啓治)から「地域ふれあい交流会」の実行委員に任命される。実行委員には順のほかに、自分の本音を語ることのない拓実(内山昴輝)、チアリーダー部の部長を務める優等生の菜月(雨宮天)、ヒジの故障で投げられなくなった野球部のエース・大樹(細谷佳正)がいた。交流会は近所のおじいちゃんやおばあちゃんたちが集まる程度の催しだったが、順たちは担任教師のプッシュもあり、オリジナルのミュージカルを上演することになる。登場人物たちがしゃべる代わりに路上で歌い踊り出すミュージカルをクラスメイトたちは笑ったが、順は違った。「人と話すことができないけど、歌なら大丈夫かも」とかすかな光明を見出す。学校外の人たちも集まる体育館での発表会が、順の呪いを解くための祝祭の場として急浮上する。

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 順だけでなく、拓実、菜月、大樹も自分の中に渦巻く感情をうまく吐き出せず、もがいていた。ミュージカルの打ち合わせを通して、悩んでいるのは自分だけでないこと、言葉やメールや暴力以外にも自分の感情を表現する手段があることに気づく。順はうまくしゃべれないながらも、腹痛に耐えて懸命に自分の意志を伝えようとする。恥ずかしさをかなぐり棄てた順のひたむきさが、拓実たちの燻っていた感情に火を点すことになる。さすがにオリジナル曲でのミュージカルは無理なので、有名曲をアレンジして構成することに。だが、聞きなじみのある既存の曲が、自分たちの想いを綴ったオリジナルの歌詞を乗せることで、まったく新しい曲へと生まれ変わっていく。

 妄想の世界で生きてきた順が考えたミュージカルの世界がかなり歪んでおり、それゆえに面白い。劇中劇として描かれるミュージカルの主人公である少女は、丘の上のお城に憧れている。実は丘の上のお城は刑務所で、お城の中は犯罪者たちでいっぱい。そして、お城に収容されている犯罪者たちは死ぬまで踊り続けるよう呪いが掛けられている。それでも少女はお城への憧れを棄てることができない。お城に収容されるよう、犯罪を次々と重ねる。そんな中、想いを共有し合える王子さまと出会うが、それまでに犯した罪のために少女は処刑台で首を刎ねられることに。斬り落とされた少女の首の中からは詰まっていた想いがメロディとなって溢れ出していく―。

 この暗くてグロいミュージカルの内容に、意外にもクラスメイトたちが賛同する。痛みを感じることでしか生を感じることができないモラトリアム世代である彼らは、順が考えたきれいごとでは済まない残酷なラストに共感したのだ。順自身のトラウマ物語が、クラスメイトたちの協力を得て、ミュージカルというお祭りへと昇華されていく。

『あの花』と同じく、秩父を舞台にし、幼年期に負ったトラウマを題材にした『ここさけ』だが、両作品の間には大きな違いがある。『あの花』がトラウマを負うことになった純真かつナイーヴな幼年期への想いをノスタルジックに描いていたのに対し、『ここさけ』では幼年期のトラウマを克服し、それまで接点のなかった他者と交わることで大人の社会へと足を踏み入れていく過程にフォーカスを絞っている。自分が考えたミュージカルをクラスメイトたちが受け入れたことで、順の内面にさらに変化が起きる。せっかくみんなが協力してくれ、町の人たちが見に来てくれるのだから、バッドエンドではなくハッピーエンドに変えたほうがいいのではないか。初期衝動を正直にぶつけるべきか、それとも観客のことも考慮したエンターテイメントにするべきか。順はひとつ上のレベルで悩むようになる。わずか数週間で驚くような成長ぶりではないか。

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 この世界は矛盾に満ちている。心を人に向かって開けば、それだけ心は傷つきやすくなる。ミュージカルの主人公に選ばれたからといって、現実世界が自分の思い通りに運ぶわけではない。晴れの舞台が失敗に終われば、ホラー映画『キャリー』(76)のような悲惨な結末になりかねない。それでも順は舞台に立ち、観客たちの前で歌うことができるのか。この世の呪いを祝福に変えるべく、順たちのトラウマミュージカルの幕が上がる。
(文=長野辰次)

『心が叫びたがってるんだ。』
9月19日(土)よりロードショー公開
http://www.kokosake.jp
原作:超平和バスターズ 監督:長井龍雪 脚本:岡田麿里 キャラクターデザイン・総作画監督:田中将賀 音楽:ミト(クラムボン) 
声の出演:水瀬いのり、内山昴輝、雨宮天、細谷佳正、藤原啓治、吉田羊 配給/アニプレックス  

(c)KOKOSAKE PROJECT 

コミュ障ガールは自分に掛けた“呪い”を解けるか? 悶絶トラウマミュージカル『心が叫びたがってるんだ。』のページです。おたぽるは、アニメ作品レビューあの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。あの花トラウマ心が叫びたがってるんだ。水瀬いのり長野辰次の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

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