6月9日に発売された藤崎ひかりの『のぞえもん』1巻が、発売から1週間あまりで幻の単行本になろうとしている。版元である日本文芸社による回収が始まっているのだ。

『のぞえもん』のストーリーは、未来から来た幼女型ロボットが四次元ランドセルから取り出す未来のオモチャで主人公・たかしを救うというラブコメ。タイトルや、のぞえもんの首元の鈴、「もシモBOX」といった“オモチャ”など、『ドラえもん』のバカパロディとして登場。さらに、内容は基本的に毎回のぞえもんほか、幼女(ロボット)の裸や失禁が描かれるエロコメであるため、発売当初から著作権絡み・ポルノ絡みの両面から「ギリギリやないか」という声が、読者からも上がっていた。

 その攻めすぎる姿勢などから話題になり、単行本の売れ行きは好調で多くの人が興味を示した。Amazonなどのネット書店だけでなく、リアル書店店頭でも売り切れる店舗が多く、発売翌日には重版が決定していた。そんなところに入った今回の回収、書店や読者からも惜しむ声が多い。

 引っかかる要素だらけでグレーゾーンの『のぞえもん』ではあったが、実際にどこが動いたために回収に至ったのか? 一部書店関係者筋の間では、回収の指示を出したのは東京都や藤子プロではなく、アサツー ディ・ケイ(ADK)だという噂が出ている。

「『のぞえもん』を発行する日本文芸社は、現在ADKの100%子会社になっています。ご存じの通り、ADKは『ドラえもん』のアニメ版権を持っている会社ですから……。外部からのクレームにしては回収の決定・対応があまりに速いですし、実際、外部からクレームが入ったという話も聞きません。今回の件は内部の決定、指示でほぼ間違いないでしょう」(書店関係者)

 回収指示は今週水曜日あたりから一部書店に連絡されているようで、週明け頃には各書店に一斉に連絡がいく見通し。そもそもの品薄状態に加え、現在の市中在庫分も店頭から消えていくだろう。なおここで面白いのが、Amazonではすでに書影が削除されており、マーケットプレイス価格は3500円以上と高騰が始まっている。既に手に入れた読者が、回収という話題で大きな人気を出し、価格上昇した当時をチャンスに儲けだしたのだ。

すでに入手困難タイトルとなってはいるが、どうしても新品で入手したい人は、各書店への連絡が行き渡り回収作業が終わるまでの数日が最後のチャンスになるだろう。また、書店筋によると、『のぞえもん』が表紙を飾っている今号の掲載誌「コミックヘヴン」(日本文芸社)も早めの返品を促す指示が出るようで、こちらも確保するなら早めに購入しておきたい。

 単行本発売直後から大きな話題をさらい、駆け抜けるように“未来”(という名の版元倉庫)へ帰ることになった『のぞえもん』。間違いなく2015年を代表するバカ・レジェンド作品といえるだろう。