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お姉さんの食卓』(徳間書店/浅岡キョウジ)

 初単行本の『變愛-奇妙な恋人たち-』で、独自のフェティシズムを見せつけてくれた、浅岡キョウジ氏が「月刊COMICリュウ」に連載していた『お姉さんの食卓』(すべて徳間書店)が単行本になった。

 脱いでいるとか、何か性的な行為を行っているわけでもないのに、妙なエロスを醸し出す浅岡氏のフェティシズム。それは、本作でさらに強烈なものになっている。

 物語は、春休みの一週間を田舎の伯母さん宅で過ごすことになった少年・孝太郎を中心に展開する。伯母さんの家へと向かうバスで出会ったのは、不思議なセーラー服のお姉さん・静。彼女が求めるのは、自分が食べられること。第一話で、静の持つキセルの煙によって孝太郎は蜘蛛に変化してしまう。「私を食べてごらんなさいな……」と誘い「体液を吸われるってこんな感じなのね……」と呟く静。でも、気がつくと、彼女はまた元のセーラー服姿になっているのである。彼女の正体を聞く孝太郎に「人間以外のものよ……」と告げた静は、こう言う。

「食べられて、吸収されて私があなたの一部になるの。それって素敵なことだと思わない?」

 その後も、孝太郎は蟻に変化させられて、静に群がり……。なるほど、このまま主人公がさまざまなものに変化させられて食べるという展開が……と思いきや、違った。なんと静と双子の姉・千春の物語を描きながら、食べさせたい欲求、食べたい欲求、食べる欲求に愛憎の入り交じった物語へと展開していくのである。そう、フェティッシュなグロなのだろうと思ったら、ホラー要素を含みながらの泣ける話だったのである。

 しかも、なぜ泣けるかといえば、食べること、食べられることが愛情の表現として描かれていくから。物語の中で、食べて、食べられているのは、肉ではなく人の気持ちであることが明かされていくくだりではガチで泣けてきたじゃないか、チキショウ……。

 食べられて喜ぶ、人間じゃない“何か”というセーラー服のお姉さんにちょっとハアハアしていただけに、泣ける展開となったあたりで一気に浅岡ワールドへと引き込まれてしまった。

 おそらく、単行本を手にした人の多くが同じ思いを感じていることだろう。いわば、本朝で例を見ない「泣けるグロ」という新ジャンル。

 単行本2冊目で、間口の広さを見せつけた浅岡氏の今後の展開が気になるところだ。
(文/ビーラー・ホラ)

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