長き沈黙から有機人形の叙事詩がついに復活 『この世界には有機人形がいる』発売記念! 蜈蚣Melibe氏インタビューの画像1
蜈蚣Melibe氏のこの世界には有機人形がいる(太田出版)

 再び単行本で出会えて、本当によかった! 大勢の読者がそう感じていると思うのが、先頃発売になった蜈蚣Melibe氏の『この世界には有機人形がいる』(太田出版)だ。

 蜈蚣Melibe氏の作品は、1997年に三和出版から発行された『バージェスの乙女たち-ワイワクシアの章-』に始まる三冊の単行本(のち1998年に『バージェスの乙女たち-ディノミスクスの章-』、1999年に『バージェスの乙女たち-アノマロカリスの章1-』が発売)、あるいは、その作品群が連載されていた同社の月刊誌「コミックフラミンゴ」で記憶している人も多いのではなかろうか。そこで蜈蚣Melibe氏が描いてきた『バージェスの乙女たち』は、遺伝子改良によって生み出された有機人形たちのいる未来の物語だ。描かれる有機人形たちは、性処理道具として、あるいは戦闘兵器として用いられる。

 人間によって酷使されながらも、いずれは人間にとって変わる力を持つ存在……そんな秘密を匂わせながら物語は、さまざまな舞台を行き来しながら描かれていた。さらに、作品の魅力を高めたのは作中に登場する有機人形の異形の姿である。特に、ディムロイド(註:二口置換体、要は口のところに性器が、性器のところに口がある)であるアノマロカリスとワイワクシアは、蜈蚣Melibe氏の独創性を象徴するものだろう。

 もっと評価されるべき蜈蚣Melibe氏の世界観を、再び商業の場で展開してくれた太田出版の運営するサイト・WEB連載空間「ぽこぽこ」の英断に感謝しつつ、メールでのインタビューをお送りする。


――「コミックフラミンゴ」での連載時からの読者なので、聞きたいことは多いのですが……コミックマーケットでもアノマロカリスのコスプレで販売されていた姿を拝見したことがあります。自身の作品のコスプレをなさるというのは、どういった背景があるのでしょうか?

蜈蚣Melibe もともとは『銀河英雄伝説』のヤン・ウェンリーのコスプレから入っていきました。コミックマーケットで大勢の人がコスプレしているのを見て「自分もやってみたい」と思って、次回からしました。後に自分でもマンガ単行本を出すにあたって「自分の作品のキャラクターでもやってみよう」となっただけです。

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『この世界には有機人形がいる』(太田出版)より。

――世界観はもちろんですが、絵のタッチの独創性には目を引かれます。こうしたタッチに開眼されるまでは、なにか原点のようなものがあるでしょうか?

蜈蚣Melibe よく言われますが、別に自分の絵が独特だとは思っていません。話が話だけに絵で読者を拒絶させないような当たり障りのない絵柄のほうがいいのですけど。

 あと、私は直線以外を日本画用の筆で書いているのですけど、これは某マンガ家の臨時アシスタントをしていたときにそのマンガ家に「まだペンに慣れてない」と言われて、「5年以上ペンで描いているけど自分には硬いペンは合わないんだ。じゃあ筆で描こう」となりました。

 それと、私は学生時代からマンガ描き仲間がいなくてずっと一人で描いていたというのがあるかもしれません。中高のクラスメイトに漫画描きがいたり、高校の同級生が後にマンガ家になったりもしましたが、あまり交流はありませんでした(私は中高と運動部だったので)。あとは中学以降、あまりアニメを見ない、ゲームをしない……なので、流行の絵柄に普段から頻繁に触れてないせいもあると思います。

――有機人形を中心とした世界観は、いつ頃、どのような経緯を経て創造されたのか教えてください。

蜈蚣Melibe 詳しく書くと長くなりますが……。1992年3月頃、思いついた話に登場する、美形細身で他種族から迫害されている異星人が有機人形の原型です。この話は結局は作品化しませんでした。元ネタはジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの『汝が半数染色体の心』(早川文庫の『老いたる霊長類の星への賛歌』に所収)に登場するフレニ人とかですね。

 この異星人を別の、剣士が活躍する未来ファンタジーに「有機人形」という一種族として設定を変えて組み込みました。設定を練っていくうちにどんどん話が膨らんで収拾がつかなくなり、1993年2月にアノマロカリスというキャラクターが私の頭の中に降臨した時点で有機人形シリーズを独立させることにしました。現在、元のファンタジーは完全にしぼんで、むしろ「バージェスの乙女たち」シリーズのほうに取り込まれています。

 その後、1993年9月に講談社コミックオープンちばてつや賞に『Dr.バージェス』で佳作。「アフタヌーン」でこのシリーズでの連載を目指して編集者といろいろ詰めていたのですが、私の力不足から大きな物語の筋道を作れず結局は断念しました。

「世界を支配する娼館イグドラシル」という案を思いついたのは1996年頃、コミックフラミンゴ新人賞受賞後。講談社時代に娼館イグドラシルを思いついていたら、いろいろ違っていたかもしれません。

――『バージェスの乙女たち』を語る時に、『家畜人ヤプー』と関連づけたキャッチ、解説を見る機会が大変多いように感じられます。そのような論じられ方を、どう受け止められていらっしゃいますか。

蜈蚣Melibe まあ、いろいろ影響は受けていますからある意味、当然と思います。むしろ光栄です。確かに私は『家畜人ヤプー』を読んで大きな衝撃を受けましたが、数日後には「これを越える作品を描いてやる」と決意しました。「バージェスの乙女たち」が『家畜人ヤプー』を越えたとは思っていませんが。

※※※※※※※※※

 発想の原点に、ジェイムズ・ティプトリー・ジュニアの小説があったとは! そこから、ここまでの世界観を構築したということには、蜈蚣Melibe氏が豊かな才能の持ち主であることを感じることができる。それでいて『家畜人ヤプー』を超えてはいないと語るのも、まだまだ多くの作品が生み出せる才能の泉を持っているからこその発言であろう。その広大な世界に期待を抱きつつ、質問を続けた。

――今回の単行本は、成人向けコミックマークなしの一般作での発売です。このことによって、読者層が広がるなどの期待はお持ちでしょうか。

蜈蚣Melibe はい。できるだけ門戸は広くしておきたいです。

――有機人形を中心とした物語はすでに長く続くシリーズであり、ライフワークとして執筆されているわけですが、当初の構想の何割くらいが完成しているのでしょうか。また、新たに描きたいエピソードも増えていらっしゃるのでしょうか。

蜈蚣Melibe 2割ぐらい……いや、虫食い状に細かいエピソードも発表しているから4割ぐらいは完成しているのかもしれません。もちろん、新たなエピソードもどんどん増えていますよ。

――今回、新作を拝見して改めて感じたのですが、女性(あるいは、有機人形)の肢体の造形は非常に特徴的だと思います。ご自身では女性の肢体のどの部分にセクシーさ、あるいはフェティシズムを感じられますか。

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『この世界には有機人形がいる』(太田出版)より。

蜈蚣Melibe 私自身のその時の状態と個人差によって全然違ってくるのでなんともいえません。とりあえず、二重あごと歯茎は好きです。

――今回、「ぽこぽこ」での連載まで、もう有機人形は商業誌では登場しないのかと残念に思っておりました。連載開始までの期間、サイトなどを通じて読者からの声援はありましたか?

蜈蚣Melibe 断続的にありました。その度に申し訳ない気持ちになって……もっと行動力があって積極的な作者だったらこの作品ももっと日の目を見ていたのでしょうが。でもこういう作品は消極的で鬱屈した人間にしか描けないのかもしれません(そう言って逃げるな)。

――ご自身では有機人形を商業誌で描きたいという意志はありましたか。あるいは、発表できる場があるのならば同人誌でも構わないとお考えでしたか?

蜈蚣Melibe 商業誌で描きたかったです。太田出版さんには感謝しています。

――「ぽこぽこ」はこれまでの商業誌に比べて、非常に読者層が広くなっているのではないかと思います。新規の読者からの感想は寄せられていますか? もしございましたら、印象に残ったものを教えてください。

蜈蚣Melibe 「思ったより普通に読めた」という意見がいくつかありました。そうです。別に難解なマンガでも限られた読者のために描いたマンガでもありません。

――私自身も蜈蚣Melibeファンに出会う機会が少なく、「フラミンゴ」で連載されていた頃は布教して歩いてたほどなのでお伺いしたいのですが、ファンは男性・女性どちらが多い印象でしょうか?

蜈蚣Melibe ありがとうございます。手紙、Eメールをくださるのは女性のほうが多いですが、コミックマーケットなどでは男性の方が多い印象でした。まあ、「男性向け」の日でしたから当然かもしれませんが。

――さまざまな有機人形を創造されていらっしゃいますが、ご自身でもっとも愛すべき一体(一人)を挙げるとすれば、どれを選ばれますか?

蜈蚣Melibe アノマロカリスさん。人間臭い有機人形よりも、どこか超越したところのある有機人形のほうが好きです。

――今作でも、第二話でイグドラシルが登場し世界観が繋がっていることを改めて認識しました。物語全体の悪の総本山のような印象を受けていますが、やはりイグドラシルは物語が終焉するまで暗躍し続けるのでしょうか。
 
蜈蚣Melibe うーん、別にイグドラシルは悪の総本山でもないのですが……。少なくとも国家よりはましな存在として描いているつもりです。以前はラストで崩壊させるつもりでしたが、今は別の方向で考えています。

――次回作も大変期待しております。今後の執筆予定、構想を教えてください。

蜈蚣Melibe ありがとうございます。一応、また「ぽこぽこ」で有機人形シリーズを連載するつもりです。次回は一話完結ではなく、続きもの。自分のサイトで小説みたいなものとして発表していた『あぞらんのいた時代』のマンガ化です。タイトルは多分変更、内容も大幅に変える予定です。

「あぞらん」という名のロリータハーフの♂有機人形の目を通して見た「アノマロカリスの章」です。主人公あぞらんが人形院(養成所)時代の師で今は辺境で娼館を経営しているイワシ先生(サイボーグ宦官)を訪ねるところから物語は始まります。他に娼館の住人(イワシ先生の教え子の有機人形)として偽アノマロカリスのシューク、猫型獣人のパンテル・ネビュルーズR8、蛇女の清姫先輩などが登場します。最終的にはアノマロカリスやバージェスと邂逅するのですが、今回はとてもそこまでは描けないでしょう。

 以前、マンガ家・荒川弘さんのインタビューで「『鋼の錬金術師』を貫くテーマは等価原則」とあったのを読んで、「じゃあ『バージェスの乙女たち』を貫くテーマは相対性だな」と思いました。有機人形はロボット以上に人間を相対化する存在ですから。

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 とても具体的に、次回作の構想を語ってくれた蜈蚣Melibe氏。これまで描いてきた物語でも、バージェスドールたちの存在する未来だけでなく、有機人形へと連なる現代の物語を描いたり、名も無き大量生産の有機人形を描いたりと、多様なエピソードを見せてくれた(もちろん、今回の単行本もそうである)。これからも、我々が思いもしなかった新しい形のエピソードを次々と見せてくれるに違いない。誰も真似することのできない世界が、もっと多くの人に知られることを期待してやまない。

 おそらく、今回の「ぽこぽこ」での連載、単行本の発売で初めて蜈蚣Melibe氏の世界に触れた若い読者も多いのではないかと思う。そうした人には、ぜひKindleで発売中の過去の単行本も読んでもらいたい。より、有機人形の魅力を知ることができるだろう。まずはリアルで有機人形について語り合うことができる人と出会える状況が生まれることを願ってやまない……なお、筆者はモラリアが一番好きです。
(取材・文/昼間 たかし)

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■蜈蚣Melibe(むかでめりべ)
生没年不詳(多分存命中)。1987年、ギャグマンガ家としてデビュー。その後、手を変え品を変え作風を変え筆名を変え(また元に戻し)、現在に至る代表作は『バージェスの乙女たち』。
公式ツイッター:https://twitter.com/Melibepapillosa

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