姫乃たまの耳の痛い話 第6回

――地下アイドルの“深海”で隙間産業を営む姫乃たまが、ちょっと“耳の痛~い”業界事情をレポートします。

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地下アイドルの活動って、切ないんです。

 アイドルもファンもみんなが顔見知りの地下アイドルライブで、大事件は起こりません。しかし、知らず知らずのうちに、大きな事件は時々起こっているようで……。

 その日のライブハウスには珍しく裏口があって、私ははしゃいでいました。私みたいな地下アイドルがライブをする会場って、たいてい出入り口がひとつで、帰りはファン同士が感想を言い合いながら待ってくれてて、しかも彼らは近所迷惑にならない出待ち場所まで熟知しているんです。

 まあそれはともかく、その日はちょっと芸能人気分でも味わってみるか、と裏口から出てみました。開演前には降っていなかった雨が降り始めていて、困ったなと思った瞬間に、偶然それを見てしまったのです。

「もういい加減にしてよ!」

 そう叫んで、彼女は男に傘を投げつけました。マスカラが雨で流れて、彼女の頬に張り付いていたのを覚えています。男は自他共に認める、彼女の一番熱心なファンでした。

 あれはなんだったんだろう。気になって、数年ぶりに彼女と再会してみました。失礼かと思いつつ、恐る恐る当時のことを話すと、彼女は目を丸くしてから、「見られてるなんて思わなかった。あんまりにも夢中だったから」と言って恥ずかしそうに笑いました。

 とは言っても、笑っているのは口元ばかりで、目はどこか遠くを見ていた彼女ですが、以前は「少しアイドルっぽい女性シンガーのバックダンサーをやっていて、そこそこ人気があった」そうです。

「ボーカルの子と雰囲気が似ていたせいか、ダンサーの中では一番人気で、ファンも多かったです。踊りは好きだったけど、だんだんボーカルの方が羨ましくなってしまって……」

 そして彼女は、路上で歌いはじめました。

 最初こそ、面白がったファンがついてきましたが、だんだんと興味をなくしたのか、ひとり、ふたりと、ボーカルの元へ戻っていきました……。最後に残った男だけが、どんな時も足を運んでくれました。

 彼女が歌い始めたことをファンから聞いたボーカルは、彼女をメンバーから外し、それをきっかけに、彼女はライブハウスで地下アイドル活動を始めます。本当はR&Bシンガーになりたかったけど、地下アイドルのほうが簡単だと思ったからです。

 アイドルに転向してからというものの、集客に伸び悩む彼女の元へ、例の男は熱心に通いつめました。オリジナル曲ができるまでは、男の選曲アドバイス通りに歌いました。そうすれば、応援しに来てくれるからです。たったひとりでも、集客がゼロかイチかでは大きく違いました。

ひとり占めしたかっただけなのに

ひとり占めしたかっただけなのに

こんな可愛く言ってもらえたらね……

「ずっと、時間もお金も、全部お前に使ったのに」――“唯一のファン”だった男が新規ファンを遠ざけた日のお話のページです。おたぽるは、cat連載アイドルアイドル&声優地下アイドル姫乃たま姫乃たまの耳の痛い話の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

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