「アイドル声優」への過保護な自主規制
“声優ブーム”に伴い、声優誌も多種多様に。

 いまさらの話になってしまうが、近年の声優人気には本当に驚かされる。一般誌や情報番組などで声優が取り上げられることも、いまや決して珍しいことではなくなっている。そんな中、とくに目立つのはいわゆる“アイドル声優”の存在だ。声の仕事ながら本人の容姿にも注目が集まり、その人気はまさに芸能界の本家アイドルにも劣らぬ盛り上がりを見せているのだ。

 しかし、こうして注目が集まるようになったことで“奇妙なイメージ戦略”も垣間見られるようになった。それは、ある男性ライターが声優専門誌で女性声優を取材したときのことだ。

「取材したのは、今期も複数のアニメ作品に出演中の女性アイドル声優です。好きな男性のタイプを尋ねたところ、『色黒で“オラオラ系”の人が好き』といった答えが返ってきました。意外でしたが、そのギャップがおもしろいので、そのまま原稿に反映したんです」

 ところが、後日ライターが発売された雑誌を確認すると、この部分が修正されていたという。代わりに書かれていたのは「優しい男性が好き」といった当たり障りのない内容だった。ただし、こうした修正は珍しい話ではない。このときも「事務所からNGが入ったのかな?」程度に考えたそうだが、何の気なしに雑誌の担当編集者にこの話題を振ったところ、「『色黒』や『オラオラ系』が読者層とかけ離れているので私が修正しました」という予想外の返答が……。

「事務所のチェックを受ける前に、編集者が修正したと聞いて驚きました。人気商売である以上、恋愛絡みの話題が『調整』されることはよくあることです。しかし、それは事務所の意向があってこそ。一般誌の芸能人の記事で迷った場合、『とりあえず書くだけ書いて、事務所の判断を仰ごう』というのが通例です。今回のようなケースは初めてでした」(前出のライター)

 一般的な芸能事務所と異なり、声優は取材時にマネジャーが同行しないことも多い。このアイドル声優のときも同様で、彼女ひとりで現場を訪れていたという。つまり、事務所側は彼女が語った内容を正確に把握することもなく、編集部から送られた“無難な原稿”のみを目にしていたことになる。

「声優専門誌として、アイドル声優のイメージを守るのも仕事のうちかもしれません。でも、少しばかり過保護というか、編集部が掲げる『アイドル声優』のイメージが“ピュア過ぎる”ような気がします」(前出のライター)

 実際に「オラオラ系がタイプ」と聞いてショックを受けるファンもいるかもしれない。しかし今回の問題はそこではなく、声優専門誌の自主規制にある。というのも、この自主規制は“アイドル声優自身に不利益を与える”可能性があるからだ。

 冒頭でも触れた通り、現在は一般誌でもアイドル声優を取り上げる媒体が増えている。もしも声優専門誌で「優しい人が好き」と語っていた声優が、一般誌では「オラオラ系が好き」と語っていたら、ファンはどう受け止めるだろうか?「雑誌や読者層に応じて意見を変える」「本心ではそう思っていないクセに、ファンに媚びる狡猾な女」などの誤解を招きかねないのでは……?

 アイドル声優の露出が多方面に広がった現在、声優専門誌にも自主規制の基準を見直す必要があるのかもしれない。
(文/神楽坂隆)

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