Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第4回

――今から30年前以上前、そう僕らが子どもだったあの頃に読みふけったマンガたちを、みなさんは覚えていますか? ここでは、電子書籍で蘇るあの名作を、振り返っていきましょう!

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(イラスト/村田らむ)

『ベルサイユのばら』が連載されていたのは、今から42年前の1972〜73年まで。ずいぶん昔である。

 世の中的には、グアムで元日本陸軍兵士横井庄一さんが発見されたり、ミュンヘン・オリンピックでテロがあったり、連合赤軍のあさま山荘事件があったりした頃である。そう、今や歴史の教科書に載っているような時代である。

 72年は僕の生まれた年なので、当然タイムリーには読んでいない。でも、74年には宝塚歌劇団で上演され大きな話題にもなり、79年にはテレビアニメになって放映されたため、僕が小学校の時には、まだまだ人気のある作品だった。

 じゃあ小学校の時に読んだか、というと読んでいない。当時は、男子が少女マンガを読むというのが、そもそもあり得なかった。

 僕が『すすめ!!パイレーツ』とか『マカロニほうれん荘』や、始まったばかりの『Dr.スランプ』などを夢中で読んでいた頃、女子の部屋に遊びに行くと、『ベルばら』『キャンディキャンディ』が置いてあった。

 ……女子の部屋に行くなんて、今よりリア充だな、小学校時代の俺……。

 内容がダメというよりは、男子はピンク全開の表紙や、キラッキラに光り輝く瞳なんかに、アレルギーを持っているのだと思う。

 結局、僕が初めて『ベルばら』を読んだのは、連載開始から17年が過ぎた、高校生の頃だった。少女マンガを読み慣れていない当時の僕にとってはかなり刺激的だった。

 時は1755年。女児なのに男性名をつけられ、軍人として生きることを宿命づけられたオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ。オーストリアの皇女、マリー・アントワネット。スウェーデンに貴族であるフェルゼンが生まれる。生まれの違う3人の男女は、フランス革命に巻き込まれて翻弄されていくのだが……。これがもう怒涛の感情論だ。世界のほとんどが、色恋沙汰で動いていく。

 マリー・アントワネットは、フェルゼンが好きで、オスカルもフェルゼンが好きで、アンドレとロザリーはオスカルが好きで、オスカルはアンドレが好きになって……。美男美女で恋愛大合戦である。

 で、太ってて、優しくて、猟と錠前作りが趣味のルイ16世は全然もてないのである。

「でくのぼうのようにつったってる」

だの

「この…どろんとした目の…この人が……」

だの

「夫になる人からのはじめてのキスをうけても……なんの胸のときめきもない」

だの……マリー・アントワネットにさんざん言われて、しまいにゃ浮気をされるのである。さすが少女マンガ。ブサイクにはとっても冷たい。

 オスカルとアンドレが結ばれる、すさまじいほど愛情があふれ返るシーンを読んで、

「ああ、こんな恋愛がしたい!!」

と憧れた女子は多かったのだろう。

 気持ちは分かるが……男子はたいてい、もうちょっとあっさりした恋愛を好む。で、セックスはもうちょっとエロいのを好むと思う。

 フランス革命は歴史的事実だが、登場人物は、実在の人物と架空の人物が織り交ぜられている。手塚治虫の『ブッダ』などと同様、よくある手法である。この場合、史実が邪魔をする実在の人物よりも、縛りのない架空の人物の方が活躍する。ベルばらの場合、オスカルやアンドレがそれにあたる。

 アンドレが失明したり、オスカルが謎の吐血をしたり、しまいにゃレジスタントになって凶弾に倒れたり……それはもう盛り上がるためならなんでもできる。

 盛り上がるだけ盛り上がって、最後の最後に、

「フ…ランス…… ばんざ…い…!」

とオスカルが倒れて大団円!!

……だと記憶していた。しかし、その後、1巻まるまる残っていた。

 最終巻の物語の中心は、中年になったマリー・アントワネットとルイ16世である。これはつらい。ルイ16世、最後は男らしく死ぬのだけど、少女読者たちの、

「太った王様がどうなろうが、知ったこっちゃねえよ」

という冷めた目がまざまざと見えるような気がした。もちろん、アニメではカットされていた。

 少女マンガの世界に生まれるなら、1に男前、2に男前、3、4がなくて、5に男前なのである。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。現在は、太田出版のWEB連載サイト「ぽこぽこ」にて、マンガ家の北上諭志と共に『デビルズ・ダンディ・ドッグス』を連載中。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/
●『デビルズ・ダンディ・ドッグス』連載ページ<http://www.poco2.jp/comic/dddogs/

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